「なんでお兄ちゃんは学校に行けるのに、あなたは行けないの?」——そんな言葉が思わず口をついて出てしまったこと、あるいは心の中でそう感じてしまったこと、保護者の方であれば一度は経験があるのではないでしょうか。
兄弟のうち一人が不登校になると、家族全体のバランスが変わります。登校している子と、学校に行けていない子。二人を毎日目の前で見ているうちに、「なぜ差があるのだろう」と頭を悩ませる保護者の方は多いのではないでしょうか。でも、そう感じてしまうこと自体は、あなたが子どもたちのことを真剣に想っているからこそです。つらいですよね。その気持ちは、けっして責められるものではありません。
ここでは、兄弟間の「比較」という問題に、少しだけ立ち止まって向き合ってみたいと思います。
なぜ兄弟を比べてしまうのか
「比べるつもりはなかったのに、ついそう見てしまう」と感じている保護者の方は、非常に多くいらっしゃいます。これは決して保護者の方の心が冷たいからではありません。同じ家庭で育った子どもたちの間に違いが生まれたとき、その原因を「何かに求めたい」という気持ちは、むしろ我が子を心配しているからこそ出てくる自然な反応です。
文部科学省が毎年実施している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小・中学校における不登校児童生徒数は約34万6,000人と過去最多を更新しています(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度)。これだけの数のお子さんが不登校の状態にあるということは、多くの家庭で似たような状況が起きており、そしてその多くの家庭に兄弟姉妹がいることも珍しくないと考えられます。
つまり、あなたが今感じているこの葛藤は、あなただけが抱えているものではないということです。「なぜうちの子だけ」と思う気持ち、「兄弟と比べてどうしてこうも違うのか」と悩む気持ち、同じように抱えている保護者の方は全国にたくさんいらっしゃいます。
比較が子どもに与える影響を知っておきたい
保護者の方が「比べているつもりはない」と思っていても、子どもはとても敏感です。「お姉ちゃんは毎日ちゃんと行ってるのに」というひとことが、不登校のお子さんにとっては深く刺さることがあります。
不登校の状態にある子どもの多くは、すでに「自分はダメだ」「みんなと違う」という感覚を内側に抱えていることが少なくありません。そこに兄弟との比較が重なると、「やっぱり自分はおかしい」「親も自分より兄弟のほうが好きなんだ」という気持ちにつながってしまう場合があります。
一方で、登校している兄弟の側にも影響が出ることがあります。「自分はちゃんとしなければ」というプレッシャーや、「なんで自分だけ頑張らないといけないの」という不満を内側に抱えてしまうこともあります。不登校の兄弟がいる子どもが「自分も休みたいけど言えない」と感じるケースも珍しくはないとされています。
比較がいい影響をもたらすことはほとんどなく、むしろどちらの子どもにとっても重荷になりやすい、ということは、まず知っておいていただけると良いと思います。
「なぜ差があるのか」という疑問への向き合い方
「同じように育てたのに、なぜ一人だけ不登校に?」と感じることは、保護者として当然の疑問です。そして、「自分の育て方が悪かったのかもしれない」という自責の気持ちも、一度は浮かんだことがあるのではないでしょうか。
その気持ちは、そのままここに置いておいてください。今すぐ否定しなくていいです。「自分のせいかも」と思うくらい、あなたはお子さんのことを真剣に考えているということだと受け取ってほしいのです。
ただ、ひとつお伝えしたいのは、「同じように育てた」としても、子どもは一人ひとり異なる内面を持ち、異なる環境・タイミングで傷つくことがあるということです。不登校のきっかけは、友人関係・先生との相性・発達特性・身体の不調(起立性調節障害など)・学校環境の変化など多岐にわたります。兄弟の間に差があるとすれば、それはその子が持つ特性や、その子が出会ったタイミングの違いによるものである場合がほとんどです。
保護者の方の育て方だけで説明できるほど、子どもの不登校はシンプルな問題ではありません。あなたを責めるための理由は、どこにもないのです。
兄弟それぞれに伝えたいこと・接し方のヒント
不登校のお子さんに対しては、まず「学校に行けないこと」について責めない姿勢が大切です。「なんでお兄ちゃんと同じようにできないの」という言葉は、たとえ焦りや心配から出たものであっても、お子さんを深く傷つけてしまうことがあります。
一方、登校している兄弟に対しても、丁寧な関わりが必要です。「あなたはちゃんとしてくれていてありがとう」「あなたはあなたのペースで大丈夫だよ」というメッセージを意識的に伝えることで、その子の安心感が保たれます。
家庭の中で二人の子どもを「比べない」ためには、それぞれの子を「別々の個人」として接するという意識を持つことが助けになるかもしれません。目に見える行動の差(学校に行くか行かないか)ではなく、それぞれの子が今どんな気持ちでいるか、どんなことを感じているかに目を向けることが、長い目で見て家族全体の安心につながっていくと言えるでしょう。
もし家庭内での対応に行き詰まりを感じたときは、スクールカウンセラー・教育相談センター・こども家庭庁が整備する相談窓口などを一つの選択肢として検討してみてください(参考:こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/)。
まとめ
兄弟を比べてしまいそうになる気持ち、「なぜうちの子だけ」という焦り、「自分の育て方のせいかもしれない」という自責感——これらはすべて、お子さんへの深い愛情から生まれているものです。あなたの愛情は、ちゃんと伝わっています。
文部科学省の調査では、不登校の子どもは年々増えており、今や特別なことではありません。兄弟がいる家庭での悩みも、多くの保護者の方が同じように抱えていらっしゃいます。あなたは一人ではありません。
焦らなくて大丈夫です。比べないことを意識しながら、それぞれのお子さんの「今」に寄り添うことが、家族全体の回復への一歩になっていくと思います。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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