「スマホばかり見ているけれど、取り上げてしまっていいのだろうか」——そう悩んでいる保護者の方は、決して少なくないはずです。不登校の子どもがスマホを手放さないと、つい「依存しているのでは」「もっと勉強すべきでは」という気持ちが湧いてくるものです。しかし、スマホを取り上げることが本当に子どもの回復につながるのかどうか、実は慎重に考える必要があります。不登校の子どもとスマホの関係を整理しながら、保護者の方にとって参考になる視点をお伝えします。
まず知っておきたい:不登校の子どもにとってスマホとは何か
不登校の状態にある子どもが、スマホを長時間使うのには理由があります。学校という「居場所」を失った状態で、スマホはその代わりとなるつながりの場になっていることが多いからです。
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(令和5年度)によると、小・中学校における不登校の児童生徒数は約34万6,000人にのぼっています。この数字は過去最多を更新し続けており、不登校は今や特別な状況ではなく、多くの子どもと家庭が向き合う問題となっています。(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」令和5年度)
不登校の子どもがスマホを使う目的はさまざまです。
・友人や同世代とSNSやゲームを通じてコミュニケーションをとる
・動画・音楽・ゲームで気持ちを落ち着ける
・自分の好きなことを調べたり学んだりする
・夜間に不安が高まったときの「逃げ場」として使う
つまり、スマホは単なる「娯楽ツール」ではなく、心の支えとして機能している場合が少なくありません。この視点をまず持っておくことが、スマホへの対応を考えるうえでとても大切です。
スマホを取り上げると何が起きるのか
「スマホを取り上げれば、生活が整うかもしれない」と考えることは自然な発想です。しかし、実際にはその後に思わぬ事態が生じることもあります。
スマホを突然取り上げた場合に起こりやすいこととして、次のような展開が報告されています。
・子どもが唯一感じていた「つながり」や「安心感」が奪われ、孤立感が深まる
・保護者への不信感や怒りが生じ、家庭内の関係が悪化する
・スマホ以外の問題行動(自室に完全にこもる、食事をとらないなど)が表面化する
・「わかってもらえなかった」という経験が、相談をあきらめるきっかけになる
こども家庭庁は、子どもの支援において「子どもの視点に立ち、意見を聴くこと」を基本方針としています(出典:こども家庭庁公式サイト、2025年5月時点確認)。スマホの使用について一方的にルールを押しつけるのではなく、「なぜスマホを使っているのか」「スマホで何をしているのか」をまず理解しようとする姿勢が、回復への近道になることがあります。
もちろん、深夜まで使い続けて昼夜逆転が固定化されているケースや、有害なコンテンツへのアクセスが確認されるケースは別です。状況に応じた対応が求められます。
スマホとどう向き合うか:取り上げる前にできること
スマホを取り上げる前に、まず試してほしいアプローチがいくつかあります。
「いつ・何を・なぜ使っているか」を観察することからはじめてください。使用時間や内容を把握せずに行動することは、子どもの信頼を損ねるリスクがあります。「何時間くらい使っているか」「どんなことをしているか」を穏やかに確認するところから始めてみてください。
次に、子どもと一緒にルールを決めることをおすすめします。保護者が一方的にルールを決めるよりも、子ども本人が関与した「一緒に決めたルール」の方が守られやすいという傾向があります。たとえば「夜11時以降は充電スタンドに置く」「食事中はテーブルに置かない」といった小さなルールから始めることが有効です。
また、スマホ以外の「居場所」や「楽しみ」を少しずつ増やすことも重要です。フリースクールや趣味の習い事、公共施設でのプログラムなど、本人が少しでも興味を持てるものを一緒に探してみてください。
スマホの使い方が気になると同時に、子どもが昼夜逆転・食欲不振・自傷などの状態にある場合は、スクールカウンセラー・児童相談所・子ども家庭センターなどへの相談をおすすめします。文部科学省は生徒指導上の諸課題への対応として、関係機関との連携を重視しています(出典:文部科学省「生徒指導等について」2025年5月時点確認)。
昼夜逆転とスマホ:ここだけは整えたいポイント
スマホ使用の中でも、特に保護者の方が気にされることが多いのが「昼夜逆転」です。深夜まで画面を見続けることで睡眠リズムが乱れ、それが回復の妨げになることは、医学的にも指摘されています。
この場合、スマホそのものを取り上げるのではなく、「就寝前の使用を制限する」という方針で対応することが現実的です。具体的には次の方法が考えられます。
・寝室にスマホを持ち込まず、別室で充電する習慣をつける
・スマホの「スクリーンタイム」機能や保護者向けのペアレンタルコントロール機能を設定する
・夜の「おやすみタイム」を一緒に決めて、親も同じように実行する(モデルを見せる)
一方的に管理するのではなく、「体を整えるために一緒に工夫しよう」という姿勢で伝えることが、子どもの受け入れやすさにつながります。
スマホを完全に取り上げることが正解かどうかは、子どもの状態・年齢・家庭環境によって異なります。「これをすれば必ず解決する」という万能の方法はないため、子どもの様子を見ながら柔軟に対応することが大切です。
まとめ
不登校の子どもにとってスマホは、単なる娯楽ではなく「つながりの場」や「心の支え」として機能していることがあります。文部科学省の令和5年度調査では不登校の子どもは約34万6,000人にのぼっており、その一人ひとりに異なる背景と事情があります。スマホを取り上げる判断をする前に、「なぜ使っているのか」を理解し、子どもと一緒にルールを考えることをおすすめします。どうしても対応が難しいと感じたときは、一人で抱え込まずスクールカウンセラーや相談窓口を活用してみてください。焦らずに、お子さんのペースに寄り添うことが、長い目で見て回復への力になっていきます。
・文部科学省「生徒指導等について」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和5年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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