「子どものためにすべてを捧げているのに、なぜか関係がうまくいかない」と感じることはありませんか。不登校のお子さんを支えるなかで、いつのまにか「共依存」と呼ばれる状態に近づいてしまう保護者の方は少なくありません。毎日お子さんのことを思い、自分を削りながら寄り添ってきた日々があるはずです。「共依存」という言葉は、愛情深い保護者の方ほど無縁ではいられないテーマかもしれません。この記事では、共依存とはどういう状態なのか、そしてそこから一歩引いて関わるためのヒントを、保護者の方と一緒に考えていきます。
「共依存」とはどういう状態なのでしょうか
「共依存」という言葉を聞いたとき、「私がそうなの?」と不安になる保護者の方も多いのではないでしょうか。もともとアルコール依存症者の家族関係を説明するために使われてきた概念ですが、現在では広く「誰かの問題に過度に関わりすぎることで、自分自身の生活や感情が相手に依存してしまっている状態」として用いられています。
不登校の場面では、たとえば次のような状態がこれに当てはまることがあります。お子さんが起きられなければ自分も眠れない、お子さんが笑えば自分も救われた気持ちになるけれど、お子さんが落ち込むと自分も一緒に落ち込んでしまう、といった感覚です。子どもの感情と自分の感情が、ほとんど区別できなくなっている状態といえるでしょう。
これは「愛情が深すぎる」ということではありません。長期間にわたる不登校生活のなかで、保護者の方がお子さんの状態を自分の責任として抱え込んできた結果として、少しずつ形成されていくものです。「この子を助けられるのは私だけ」という気持ちが強くなりすぎると、気づかないうちに共依存に近い状態になっていることがあります。
あなたがそう感じているとしたら、それはあなたが愛情深い保護者であるからこそです。責める必要はありません。ただ、この状態が続くと、お子さんにとっても保護者の方にとっても、少し苦しくなってしまうことがあります。
共依存が生まれやすい背景を知っておきましょう
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度公表)によると、小中学校における不登校の児童生徒数は約34万6,000人にのぼっており、過去最多を更新し続けています。これほど多くのご家庭が不登校と向き合っているという事実は、「自分だけじゃない」と感じていただくうえでも、大切な数字だと思います。
不登校が長期化するほど、保護者の方はお子さんの生活のすべてに関わるようになっていきます。食事・睡眠・気分のよしあし、今日は外に出られるかどうか。家のなかで一日中お子さんのことを気にかけながら過ごすうちに、保護者の方自身の時間も感情も、お子さん中心になっていくのは自然なことです。
また、「自分がしっかり支えなければ」という責任感が強い保護者の方ほど、この状態になりやすいという傾向があります。学校・職場・周囲の目を気にしながら、外では「うちは大丈夫」と取り繕いつつ、家では限界寸前まで頑張っている方も少なくないのではないでしょうか。そのような状態が数ヶ月、あるいは数年と続いていくうちに、保護者の方自身が「自分のこと」を後回しにすることが当たり前になってしまいます。
共依存が生まれやすい背景には、「相談できる人がいない孤立感」も大きく影響すると考えられています。こども家庭庁の相談窓口の整備が進んでいる一方で、実際に「誰かに話を聞いてもらえた」と感じている保護者の方はまだ少ないかもしれません。孤立のなかで、気づかないうちに子どもとの関係だけが「居場所」になっていくことがあるのです。こうした背景を知っておくだけでも、「なぜこうなってしまったのか」という自己嫌悪から、少し距離を置くことができるでしょう。
共依存のサインに気づくためのチェックポイント
「自分が共依存かどうか」を判断するのは難しいですし、ここで断定することも適切ではありません。ただ、以下のような状態が続いているとしたら、少し立ち止まって考えてみることも大切かもしれません。
まず、お子さんの気分に自分の気分が強く左右されていると感じることがあるでしょうか。お子さんが元気そうにしていると安心できるけれど、少し荒れるとその日一日が暗くなってしまう、という状態です。
次に、「自分がいないとこの子はダメになる」という強い使命感があるかどうかです。もちろん、保護者が支えることは大切です。しかし、お子さんがほんの少し自分で動こうとしているときにも先回りして手を出してしまう、というパターンが続いているなら、少し考えてみる余地があります。
また、自分自身のやりたいことや楽しいことを後回しにし続けていませんか。「今は子どものことで精一杯だから」と自分の時間を犠牲にし続けることは、長い目で見ると保護者の方自身が疲弊してしまい、お子さんへの関わりにも影響が出てくることがあります。
さらに、「もし私が倒れたら誰がこの子を支えるのだろう」と考えながらも、休めずにいるという方もいらっしゃいます。自分が倒れることへの不安を抱えながら、それでも休めないという状態もまた、ひとつのサインかもしれません。
これらはあくまで「気づきのきっかけ」です。当てはまったとしても、あなたが悪いわけではありません。それだけお子さんのことを思い続けてきた証拠でもあります。
「少し離れる」ことは、愛情がないことではありません
共依存に近い状態だと感じたとき、「もっと突き放せばいいの?」と悩む保護者の方もいらっしゃいます。そうではありません。大切なのは「突き放す」ことではなく、「適切な距離を保ちながら関わる」ことです。
お子さんには、安心できる親の存在が必要です。同時に、お子さんが「自分で考えて、自分で動く」力を育てるためには、親が少し後ろに下がる余白も必要です。たとえば、起きられなかった朝に毎回声をかけ続けることが、かえってお子さんの「自分でやろう」という気持ちを奪ってしまっていることもあります。
そして、保護者の方が自分自身の時間を持つことは、お子さんへの愛情を薄めることではありません。保護者の方が笑顔でいられる時間、ほっとできる時間が増えることは、家のなかの空気を少しずつ変えていくことにつながるでしょう。
「自分が楽しんでいていいのだろうか」と罪悪感を感じる保護者の方は多いのではないでしょうか。でも、あなたが元気でいることは、お子さんにとっても大切なことです。あなたの愛情は、少し距離を置いていても伝わっています。
専門家に相談することも、選択肢のひとつです。スクールカウンセラーや教育相談センター、家族支援の専門窓口など、保護者の方自身が話を聞いてもらえる場所が少しずつ増えています。「相談することは弱さではない」と、どうか思っていただけたらと思います。ひとりで抱え込まないでください。
まとめ
不登校のお子さんを支えるなかで、知らず知らずのうちに「共依存」に近い状態になってしまう保護者の方は決して少なくありません。それはあなたが愛情深く、一生懸命関わってきた結果でもあります。文部科学省の調査では不登校の児童生徒数が約34万6,000人に達しており(文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度公表)、同じ悩みを抱えている保護者の方がたくさんいらっしゃいます。あなただけではありません。
大切なのは、自分を責め続けることではなく、少しだけ立ち止まって「今の自分とお子さんの関係を見直してみる」ことです。専門家への相談や、保護者の方自身のための時間を持つことも、立派なお子さんへの支援につながります。焦らなくて大丈夫です。一歩ずつ、一緒に考えていきましょう。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度公表) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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