「学校に行けない状態が続いているけれど、どこに相談すればいいのかわからない」という保護者の方は少なくありません。スクールカウンセラー、教育委員会、医療機関など、相談窓口の選択肢が多すぎて、かえって混乱してしまうこともあるでしょう。そのなかで「児童相談所」という名前を聞いたことはあっても、「虐待の相談をするところでは?」と感じて、不登校の相談先としては考えてこなかった保護者の方も多いのではないでしょうか。児童相談所が不登校にどう関わるのか、どのような支援が受けられるのかを、以下でわかりやすく整理してお伝えします。
「虐待だけではない」児童相談所の本来の役割
児童相談所と聞くと、虐待対応をイメージする保護者の方が多いかもしれませんが、それは役割の一部にすぎません。
児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて各都道府県・政令指定都市が設置する専門機関です。その対象は「18歳未満のすべての子どもに関する相談」であり、不登校や発達上の課題、家庭環境の問題、非行、障害に関する相談など、幅広い分野を担っています。
具体的には、以下のような相談を受け付けています。
・養護相談(虐待・養育困難など)
・障害相談(知的・身体・発達障害など)
・非行相談(問題行動・触法行為など)
・育成相談(不登校・家庭内暴力・性格行動の問題など)
・保健相談(心身の発育・健康に関する相談)
つまり、「育成相談」の枠組みのなかに「不登校」は明確に含まれています。不登校は決して「特別なケース」ではなく、児童相談所が日常的に対応している相談のひとつです。虐待を受けていなければ相談できない、ということはありませんので、ぜひ選択肢のひとつとして捉えていただければと思います。
不登校で児童相談所に相談するとどうなるのか
実際に児童相談所に相談した場合、どのような流れになるのかを整理してみましょう。
まず、電話・来所・訪問などの方法で相談を受け付けてもらえます。全国共通の相談ダイヤル「189(いちはやく)」に電話すると、最寄りの児童相談所につながる仕組みになっています(こども家庭庁が周知・運用に関与しています)。
相談を受けた後は、児童相談所の「児童福祉士」や「心理師(心理職)」が対応します。不登校の背景には、発達特性、家庭環境、対人関係のストレス、身体的な不調など、さまざまな要因が絡み合っていることがあります。児童相談所では、こうした背景を丁寧に把握するために「調査・診断・判定」というプロセスをとる場合があります。
その後、必要に応じて以下のような支援につながることがあります。
・継続的な相談・カウンセリング(心理職による面接)
・家族全体へのアドバイス・支援
・医療機関や福祉サービスへの紹介・連携
・学校・教育委員会・スクールカウンセラーとの情報共有
・必要な場合はショートステイや入所支援など
ここで大切なのは、「相談したからといって強制的に何かが決まるわけではない」という点です。相談はあくまでも保護者と子どもの意思を尊重しながら進められます。「通報されてしまうのでは」という不安から相談をためらう必要はありません。
学校・教育委員会との連携はどう行われるか
文部科学省は、生徒指導に関する方針として「関係機関との連携」を明確に位置づけています(出典:文部科学省「生徒指導等について」)。不登校対応においても、学校・教育委員会・スクールカウンセラーだけで完結させず、児童相談所をはじめとする福祉機関と連携することが推奨されています。
具体的には、以下のようなケースで連携が行われることがあります。
・長期不登校で家庭訪問にも応じない状態が続いている場合
・家庭環境に不安定な要因がある場合
・子どもに発達面での支援ニーズが疑われる場合
・保護者自身も精神的に追い詰められており、家庭全体への支援が必要な場合
連携は必ずしも「問題が深刻だから」という理由だけで行われるわけではありません。「より適切な支援につなぐため」という積極的な意味合いもあります。学校の担任や養護教諭から「児童相談所に相談してみてはどうか」と提案されても、それは「見捨てられた」という意味ではなく、より専門的なサポートを受けてほしいという配慮からの提案であることが多いと言えます。
また、内閣府の「こどもの生活状況調査」(令和4年度)によると、15歳から64歳のひきこもり状態にある人は約50人に1人の割合に上るというデータがあります(出典:内閣府「こどもの生活状況調査」令和4年度)。不登校が長期化し、ひきこもり状態へと移行するケースもゼロではないことを考えると、早い段階で専門機関に相談しておくことには、リスクの軽減という観点からも意味があると言えます。
児童相談所以外に組み合わせて使える相談窓口
児童相談所はあくまでも選択肢のひとつです。不登校の相談先は、状況や目的によって使い分けることができます。以下に代表的な窓口を整理します。
・「教育センター・教育相談室」:教育委員会が設置する相談窓口です。学習や進路、学校復帰に向けた相談に向いています。
・「スクールカウンセラー」:学校に配置されている心理専門職です。子どものこころの状態を専門的に把握し、学校との橋渡し役を担います。
・「スクールソーシャルワーカー」:家庭環境や生活上の困難を抱えるケースに強い専門職です。福祉的な支援機関との連携が得意です。
・「児童相談所(189)」:福祉・心理・医療など複合的な支援が必要なケース、または家庭全体への支援が必要な場合に特に力を発揮します。
・「こども家庭センター」:2024年度から市区町村での整備が進んでいる新しい相談窓口です。こども家庭庁が推進しており、子育て支援と児童福祉を一体的に提供する拠点として機能しています。
大切なのは「完璧な窓口を探すこと」ではなく、「まず一か所に相談してみること」です。最初の相談先が合わなければ、そこから適切な機関を紹介してもらうこともできます。
まとめ
児童相談所は、虐待対応だけを行う機関ではありません。不登校を含む「育成相談」は、児童相談所が担う重要な業務のひとつです。電話番号「189」からいつでも無料で相談できますので、「どこに相談すればいいかわからない」という状況のときこそ、まず一歩を踏み出す場所として活用できます。
学校・教育委員会・スクールカウンセラーと組み合わせながら、お子さんの状況に合った支援の形を探していくことが大切です。お子さんのペースを大切にしながら、保護者の方自身も一人で抱え込まずに専門家を頼っていただければと思います。
参考情報:
・文部科学省「生徒指導等について」:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・内閣府「こどもの生活状況調査」:https://www.cao.go.jp/
・厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/
・こども家庭庁 公式サイト:https://www.cfa.go.jp/
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