「大学無償化って、うちの子にも使える制度なの?」――そう感じている保護者の方は、決して少なくないはずです。不登校を経て通信制高校に在籍していたり、高卒認定試験で大学進学を目指していたりするお子さんの場合、「特別な条件があるのでは」「申請できないかもしれない」と不安になりがちです。結論から言えば、不登校経験の有無そのものは大学無償化の適用要件には関係ありません。ただし、制度の仕組みを正しく理解しておかないと、申請の機会を逃してしまうことがあります。今回は、制度の全体像から申請の流れまで、保護者の方が「なるほど」と感じられるよう丁寧に整理します。
そもそも「大学無償化」とは何か
「大学無償化」と呼ばれる制度の正式名称は「高等教育の修学支援新制度」です。文部科学省が2020年度から実施しているこの制度は、大きく2つの支援で構成されています。
・授業料・入学金の減免(大学・短期大学・高等専門学校・専門学校が対象)
・給付型奨学金の支給(日本学生支援機構〈JASSO〉が実施)
この2つがセットで受けられることが制度の特徴です。授業料の減免は在籍する学校が手続きを行い、給付型奨学金はJASSOへの申請が必要になります。
支援を受けられる金額は家庭の収入状況と在籍する学校の種類によって異なります。文部科学省の公式情報(2026年5月時点)によると、住民税非課税世帯の学生が国公立大学に通う場合、授業料の減免は年間約54万円、給付型奨学金は自宅通学で月額2万9,200円、自宅外通学で月額6万6,700円が支給される仕組みになっています(出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/mushouka/)。
ここで重要なのは、この制度の適用要件が「世帯の収入基準」と「在籍する学校の認定状況」によって決まる点です。どのような経緯で高校を卒業したか、あるいは不登校の経験があったかどうかは、制度上の判断材料には含まれていません。
不登校経験者が制度を利用するための3つの条件
不登校経験のある学生が修学支援新制度を利用するためには、基本的に以下の3つの条件を満たす必要があります。
1.「支援対象校」に在籍していること
文部科学省が認定した大学・短期大学・高等専門学校・専門学校に在籍していることが前提です。在籍を検討している学校が支援対象校に含まれているかどうかは、文部科学省の公式サイトで確認できます(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/mushouka/)。
2.収入・資産の基準を満たしていること
住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)が最大支援を受けられます。課税世帯でも収入によって第Ⅱ区分・第Ⅲ区分として一定の支援が受けられる場合があります。なお、2024年度からは多子世帯(子ども3人以上)や理工農系学部の学生への支援も拡充されており、収入の上限がやや引き上げられた経緯があります。
3.学業の継続意欲があると認められること
「学習意欲がないと認められる場合」は支援が停止または廃止される仕組みになっています。具体的には、出席率や成績が著しく低い場合などが該当しますが、入学時点での不登校経験は要件に含まれていません。
通信制高校・高卒認定からの進学でも申請できるか
保護者の方からよく聞かれるのが「通信制高校を卒業した場合でも申請できるのか」「高卒認定を取って大学に進む場合はどうなるのか」という疑問です。
答えは、どちらの場合も申請できます。
制度が見ているのは「大学入学時点での状況」であり、高校での在籍形態や卒業経緯ではありません。通信制高校を卒業して大学に進学した場合も、高卒認定試験に合格して大学に入学した場合も、収入基準と在籍要件を満たしていれば修学支援新制度の対象になります。
文部科学省『令和5年度学校基本調査』(2023年度、出典:https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm)によると、通信制高校の在籍者数は26万7,300人を超えており、この層の多くが将来的に大学・専門学校への進学を検討するルートにあります。こうした背景からも、通信制高校卒業者や高卒認定合格者が支援制度から除外されていないことは制度の重要な特徴と言えます。
一方で注意が必要なのは、在籍先の大学・専門学校が「支援対象校」として認定されているかどうかです。大学であれば大多数が対象ですが、一部の専門学校は認定を受けていない場合もあります。進学先を選ぶ際に事前に確認しておくことをお勧めします。
申請の流れと「予約採用」を知っておくべき理由
修学支援新制度の申請には「在学採用」と「予約採用」の2種類があります。特に保護者の方に知っておいていただきたいのが「予約採用」です。
「予約採用」とは、高校在学中(通信制高校含む)または高卒認定合格後に、進学前の段階でJASSOへ申請しておく仕組みです。予約採用で申請しておくと、大学入学直後から支援を受けられるため、入学金や前期授業料の支払い時期に間に合いやすいという大きなメリットがあります。
通常のスケジュールでは、高校3年生(または高卒認定合格後)の秋ごろに在籍する高校やJASSOを通じて手続きを行います。2026年5月時点では、2027年度大学入学を目指すお子さんが予約採用の申請準備を始める時期として適切です。
手続きの流れを整理すると以下のようになります。
1.在籍する通信制高校の担当者に「修学支援新制度の予約採用申請をしたい」と伝える
2.学校経由でJASSOのシステム(スカラネット)にアクセスし、家族の収入情報等を入力する
3.審査結果が通知され、支援の区分(第Ⅰ〜Ⅲ区分)が決定する
4.進学後、大学側に授業料減免の申請を行う
高卒認定合格者の場合は、高校を経由しないため直接JASSOへ申請する手続きになります。詳細はJASSOの公式サイト(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/)で確認できます。
まとめ
不登校の経験があること、通信制高校を経て大学に進むこと、高卒認定試験で資格を得ること、いずれも「大学無償化(修学支援新制度)」の申請を妨げる理由にはなりません。制度が見ているのは家庭の収入状況と在籍する大学の認定状況です。
ただし、支援を確実に受けるためには「予約採用」の時期を逃さないこと、進学先が支援対象校かどうかを事前に確認することが大切です。2027年度大学進学を目指すお子さんをお持ちの場合、2026年秋の予約採用申請が重要なタイミングになります。
制度の詳細は文部科学省の公式ページとJASSOの公式サイトで最新情報を確認し、不明点は学校の担当者かJASSOの相談窓口に直接問い合わせることをお勧めします。お子さんの進路を経済的な理由で諦めなくてよいよう、制度をしっかり活用してください。
・文部科学省「高等教育の修学支援新制度」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/mushouka/
・文部科学省『令和5年度学校基本調査』https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
・日本学生支援機構(JASSO)「給付奨学金の申込み」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/
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