「担任の先生に相談しても解決しない」「スクールカウンセラーとは別に、もっと生活面を支えてくれる人がいると聞いたけれど、どこに頼めばいいのかわからない」という声は、不登校のお子さんを持つ保護者の方から少なくない頻度で聞かれます。そのような場面で力になれる専門職が、スクールソーシャルワーカー(SSW)です。名前は聞いたことがあっても、具体的に何をしてくれる人なのか、どうすれば会えるのかが見えにくい制度の一つです。スクールソーシャルワーカーの役割・スクールカウンセラーとの違い・相談のつなぎ方を、公式データをもとに以下で整理していきます。
スクールソーシャルワーカーとは何をする専門家なのか
スクールソーシャルワーカーは、主に社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持ち、「子どもを取り巻く環境へのアプローチ」を専門とする支援職です。
ここが重要なポイントです。スクールカウンセラーが「子どもや保護者の心理的なサポート」を主な役割とするのに対して、スクールソーシャルワーカーは「家庭・学校・地域・福祉機関などの環境を整えること」に重点を置いています。
具体的には、以下のような支援を担います。
1.家庭訪問を行い、家庭環境の状況を把握して学校や行政機関につなぐこと
2.貧困・虐待・ヤングケアラーなど、家庭に抱えた問題が不登校の背景にある場合の支援調整を行うこと
3.福祉サービス(児童相談所・市区町村の相談窓口・生活保護担当など)との連携を取り持つこと
4.保護者や教職員への助言・情報提供を通じて、子どもを支えるチームをつくること
文部科学省は「生徒指導提要(2022年改訂版)」の中で、スクールソーシャルワーカーの役割を「児童生徒が置かれた様々な環境への働きかけや、関係機関等とのネットワーク構築など、多様な支援を行う専門職」と定義しています(出典:文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」2022年)。
つまり、担任の先生では動きにくい「家庭・地域・行政の連携」を、外部との橋渡し役として担うのがスクールソーシャルワーカーの本来の強みです。
スクールカウンセラーとの違いを整理する
保護者の方が「どちらに相談すればいいのか」と迷われるのは自然なことです。両者の違いを整理すると、判断がしやすくなります。
スクールカウンセラーは、臨床心理士や公認心理師などの資格を持ち、おもに「心理的アプローチ」で子どもや保護者を支援します。学校内に週1回程度配置されるケースが多く、面談・心理検査・教職員へのコンサルテーションなどを担います。
スクールソーシャルワーカーは、社会福祉士・精神保健福祉士などの資格を持ち、「環境へのアプローチ」で支援します。担当する学校や地域を複数受け持つ場合が多く、必要に応じて家庭訪問や関係機関との会議に出向く動き方が特徴です。
整理すると、「子どもや保護者の気持ちをほぐしたい・心理的な支えが欲しい」という場合はスクールカウンセラーが適しており、「家庭の経済状況・生活環境・福祉的な課題が不登校の背景にある」と感じる場合はスクールソーシャルワーカーへのつながりが力になる可能性があります。文部科学省の公式見解でも、両者は補完的な関係にあることが示されており、適切に連携して機能することが理想とされています(出典:文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」2022年)。
どちらか一方だけに頼る必要はなく、状況に応じて両方の支援を同時に受けることも十分に可能です。
全国での配置状況と「会えない」問題の実態
スクールソーシャルワーカーの存在を知っていても「うちの学校にはいない」「どこに頼めばいいのかわからない」という声は、実際に多く聞かれます。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2023年度)」によると、不登校の小中学生は2023年度に346,482人に達し、過去最多を更新しました(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度)。一方で、スクールソーシャルワーカーの配置は、学校ごとに常駐するのではなく、教育委員会に所属しながら複数校を巡回する形が多い現状があります。
このため、保護者の方が「会いたい」と思ったときにすぐに相談できるとは限らない、という点が課題として指摘されています。
相談への近道として、以下の3つの方法が現実的です。
1.学校の担任・教頭・管理職に「スクールソーシャルワーカーにつないでほしい」と直接依頼する方法です。学校が教育委員会に要請を出すことで、スクールソーシャルワーカーが動き始めるケースが多くあります。
2.市区町村の教育委員会に直接問い合わせる方法です。配置の有無・担当者の連絡先を教育委員会の生徒指導担当に確認することができます。
3.こども家庭センター(旧子育て世代包括支援センター)など、こども家庭庁が推進する相談窓口を通じてつなぐ方法もあります(出典:こども家庭庁公式サイト)。
「頼み方がわからない」という場合も、まず学校への一言「SSWに相談したいのですが」が入口になります。
スクールソーシャルワーカーが実際に動く場面
どのような状況でスクールソーシャルワーカーが特に力を発揮するのか、具体的な場面で考えてみましょう。
まず、「家庭の事情が不登校の背景にある」と感じる場合です。経済的な困難・親の病気・兄弟の世話を担っているヤングケアラー状況・DVや虐待の懸念があるなど、家庭環境そのものに課題がある場合、スクールソーシャルワーカーは福祉機関との連携を取りながら環境整備を進めます。
次に、「複数の機関がバラバラに関わっていて、情報がつながっていない」と感じる場合です。医療機関・放課後デイサービス・教育相談センターなど、複数の機関がそれぞれに関わっているものの連携が取れていないときに、スクールソーシャルワーカーが支援の調整役(コーディネーター)になることがあります。
また、「保護者自身も疲弊していて、どこに相談すればよいかわからない」という状態のときにも、スクールソーシャルワーカーが窓口となり、必要な支援機関への橋渡しをしてくれます。
一方で、スクールソーシャルワーカーは医療行為や診断を行う専門家ではありません。発達障害・起立性調節障害などの医療的なサポートが必要な場合は、医療機関への受診を合わせてご検討ください。
まとめ
スクールソーシャルワーカーは、不登校支援の中でも「家庭・地域・福祉機関との連携」を担う専門職です。心理的なケアはスクールカウンセラー、環境整備と関係機関の連携はスクールソーシャルワーカーと、役割が異なることを覚えておくと、「誰に相談すればいいか」が整理されやすくなります。
文部科学省の2023年度調査では不登校児童生徒数が346,482人と過去最多を更新しており、一人ひとりの背景に応じた支援が今まで以上に求められています。「うちの子のケースはどこに相談すればいいの?」と感じたら、まず学校や教育委員会に「スクールソーシャルワーカーにつないでほしい」と伝えることが、最初の一歩になります。
・文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」(2022年)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2023年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
関連記事
・不登校の相談窓口と支援機関の選び方:https://futoukou.co.jp/support-system/
・不登校の子どもへの保護者の関わり方:https://futoukou.co.jp/parents-support/
・不登校から通信制高校への進路を考える:https://futoukou.co.jp/correspondence-school/

コメント