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起立性調節障害と不登校の関係を保護者が知るべきこと

起立性調節障害と不登校の関係を保護者が知るべきこと

「朝になるとお腹が痛い」「起き上がれない」「昼になると元気になる」——そんなお子さんの姿に、もしかして怠けているのでは、と不安に感じている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、その症状は「起立性調節障害」という身体の病気によるものである可能性があります。文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(2024年度)によると、不登校の小中学生は約34万6,000人に上っており、その背景にある要因は多岐にわたることが示されています。起立性調節障害はそのひとつとして、近年、学校現場や医療機関でも注目が高まっています。この記事では、起立性調節障害とはどのような状態なのか、不登校とどのようにつながるのか、保護者としてどう向き合えばよいのかをお伝えします。

目次

起立性調節障害とは何か

起立性調節障害とは、立ち上がったときや長時間立っているときに、血圧・心拍数などの自律神経の調節がうまく働かなくなる状態のことをいいます。医学的には「自律神経機能不全」の一種とされており、特に思春期に多く見られます。

朝、なかなか起き上がれない、立ちくらみやめまいが起きる、午前中は頭が痛くて動けないのに午後になると活動できる——こうした症状が繰り返し起きる場合、起立性調節障害という特性を持つお子さんである可能性が考えられます。

日本小児心身医学会が公開している診療ガイドラインによると、起立性調節障害には複数のタイプがあり、症状の重さや現れ方にも個人差があるとされています。軽症であれば日常生活にほとんど影響が出ないケースもありますが、重症になると午前中の活動がほとんどできず、学校に通うことが難しくなる場合もあります。

ここで大切なのは、これが「意志の力でどうにかなる問題ではない」という点です。身体の自律神経系の働きに関わることであるため、「もっとがんばれば起きられる」という話ではありません。お子さん本人も、自分の意思とは無関係に症状が出ることに戸惑いや自己嫌悪を感じているケースが多く見られます。

保護者の方が「怠けではなく、身体の問題かもしれない」という視点を持つことが、お子さんにとって大きな支えになります。まずはかかりつけ医か小児科に相談し、起立性調節障害の可能性について確認してみることをおすすめします。

不登校との関係はどのように生まれるか

起立性調節障害の症状が強い時期には、朝の登校時間帯に最も体調が悪くなるという特徴があります。学校の始業時間は多くの場合、午前8時前後です。しかしこの時間帯は、起立性調節障害の特性を持つお子さんにとって、身体的に最も辛い時間帯と重なりやすいのです。

毎朝、体調が悪い状態で無理に起き上がろうとしても、頭痛・吐き気・強い倦怠感などから登校できない日が続きます。そのうちに「また行けなかった」という焦りや罪悪感が積み重なり、やがて学校という場そのものへの不安が高まっていくことがあります。これは、身体症状から始まったものが、心理的なストレスと結びついていく過程ともいえます。

文部科学省の不登校調査では、不登校の要因として「無気力・不安」が最も多く挙げられていますが、その背景に身体的な疾患が関わっている場合も少なくないとされています(出典:文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』2024年度)。起立性調節障害はまさにその代表的な例のひとつとして、学校や医療関係者の間でも認識が広まりつつあります。

また、「午後は元気なのになぜ朝は行けないのか」という周囲からの誤解が、お子さんをさらに追い詰めてしまうことがあります。症状が一日の中で波があることも、この病気の特徴のひとつです。保護者の方が学校や担任の先生に正確に状況を伝えることで、お子さんへの理解が深まり、学校との連携もしやすくなります。

保護者としてできること・注意したいこと

起立性調節障害が疑われる場合、保護者の方がまず取り組めることとして、生活環境を整えることが挙げられます。具体的には、夜遅くまでスマートフォンを使わない習慣づくり、適度な水分・塩分の摂取、急に立ち上がらないようにすることなどが、日本小児心身医学会のガイドラインでも推奨されています。ただし、個々のお子さんの状態によって対応は異なりますので、取り組む前に必ず医師にご相談ください。

一方で、保護者の方が気をつけたいのは「早く治して学校に戻さなければ」という焦りを前面に出してしまうことです。お子さん自身も回復を望んでいます。そこに「なぜ行けないの」「もう少しがんばれないの」という言葉が重なると、罪悪感がさらに深まり、回復の妨げになる場合があります。

回復のペースは一人ひとり異なります。数週間で改善するケースもあれば、数ヶ月、あるいはそれ以上かかるケースもあります。「学校に行けること」だけをゴールにせず、お子さんの体調と気持ちが少しずつ安定していくことを目標として見守る姿勢が、長い目で見ると回復を支えます。

また、不登校が続く中で「勉強が遅れてしまう」という不安も大きいと思います。そのような場合には、体調が安定してきた段階でフリースクールや通信制高校、家庭教師など、登校を前提としない学習環境を選択肢として検討することも一つの道です。学び方の選択肢は、以前より広がっています。

どんなときに専門家に相談すればよいか

「もしかして起立性調節障害かもしれない」と感じたとき、最初の相談先としてはかかりつけの小児科が適切です。症状の程度や期間、生活習慣などを伝えた上で、必要に応じて小児循環器科や小児心身科(小児科の中で心身医学を専門とする診療)への紹介を受けることができます。

「子どもが朝起きられない」という状態が2週間以上続いている場合、または立ちくらみ・動悸・頭痛・腹痛などの症状が繰り返し起きている場合には、早めに専門家にご相談されることをおすすめします。自己判断での診断は避け、医師の診察を通じて正確な状態を確認することが大切です。

なお、起立性調節障害と合わせて、不安障害や抑うつ状態などの心理的な側面が重なっている場合もあります。そのような場合には、児童精神科や思春期外来など、心理面の専門家との連携が必要になることもあります。主治医の先生と相談しながら、お子さんに合ったサポートを一緒に考えていただければと思います。

学校側への連携という点では、担任や養護教諭に診断名や症状を正確に伝えることで、出席の扱いや授業の配慮など、学校としての対応が変わることがあります。こども家庭庁も「こどもにとっていちばんの利益を考える」ことを基本方針として掲げており(参照:こども家庭庁公式サイト)、医療・学校・家庭が連携してお子さんを支えていく体制が求められています。

まとめ

起立性調節障害は、意志や根性でどうにかなる問題ではなく、自律神経の働きに関わる身体の状態です。この理解が、お子さんへの適切なサポートの出発点になります。不登校の背景に起立性調節障害が関わっている場合、焦らず体調の回復を優先しながら、学校・医療・家庭が連携して関わることが大切です。症状が気になる場合は、早めにかかりつけ医や小児科にご相談ください。保護者の方がお子さんの状態を正しく理解しようとすることが、何よりの支えになります。

・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2024年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
・日本小児心身医学会「小児起立性調節障害診療・対応ガイドライン」https://www.jisinsin.jp/

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・不登校からの進路選択と通信制高校の活用:https://futoukou.co.jp/career-path/

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