「昼夜逆転してゲームばかりしている」「学校に行かなくなってからゲーム漬けになった」——そんな状況を目の当たりにして、どう関わればいいか途方に暮れている保護者の方は少なくないでしょう。ゲームへの没頭と不登校は、どちらが先なのか、どう対応すればいいのか、整理しようとするほどわからなくなることがあります。この記事では、公式データをもとにゲーム依存と不登校の関係を正確に整理し、家庭での対応のヒントをお伝えします。
不登校の現状とゲーム依存が注目される背景
まず、不登校の現状を確認しておきましょう。文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小・中学校における不登校児童生徒数は約34万6,000人にのぼり、過去最多を更新しています。10年連続で増加が続いており、不登校は今や決して珍しい状況ではありません。
この不登校増加と時を同じくして、社会的に関心が高まっているのがゲーム依存の問題です。世界保健機関(WHO)は2019年にゲーム障害(Gaming Disorder)をICD-11(国際疾病分類第11版)に正式に疾患として追加しました。ゲーム障害の定義は「ゲームを行うことへのコントロールができない」「日常生活よりゲームを優先する」「問題が生じてもゲームを続ける」状態が12ヶ月以上続くこととされています。
ここで重要なのは、「ゲームをよくしている=ゲーム依存」ではないという点です。長時間ゲームをすること自体がすぐに依存や障害を意味するわけではなく、その背景に何があるかを見ることが大切です。不登校の子どもがゲームに向かう理由は様々であり、ゲーム自体が不登校の「原因」なのか「結果」なのかを、まず保護者の方に整理していただきたいと思います。
ゲームは「逃げ場」か「原因」か——関係を整理する
不登校の子どもがゲームをする理由について、専門家の間では大きく2つの見方があります。
1つ目は、「不登校になったことでゲームが逃げ場になっている」という見方です。学校に行けないつらさ、将来への不安、対人関係の疲れ——こうした気持ちを抱えた子どもにとって、ゲームの世界は安全で達成感を得られる場所になることがあります。ゲームの中では自分がコントロールできる感覚を取り戻せるため、心が疲れているときほど没入しやすくなるという傾向が見られます。
2つ目は、「ゲームへの過度な没頭が生活リズムを乱し、登校困難につながった」という見方です。夜間のゲームによる睡眠不足が昼夜逆転を招き、朝起きられない状態が続いて学校に行けなくなるケースも報告されています。
厚生労働省の研究班が実施した「ネット・ゲーム依存に関する実態調査」(2021年度)では、中高生を対象に調査が行われており、日常生活に支障が出るレベルのゲーム利用については、睡眠・学業・対人関係への悪影響が指摘されています。
つまり、「ゲームが先か不登校が先か」は一概には言えず、両者が互いに影響し合っていることが多いと言えます。どちらが「原因」かを探すよりも、今お子さんが何を求めているのかを理解することが、支援の第一歩になります。
家庭でできる対応の基本的な考え方
ゲームと不登校が絡み合っている状況では、「ゲームをやめさせる」ことを最優先にするよりも、お子さんの状態全体を見ることが重要です。以下の3点を基本的な考え方として持っておきましょう。
1.まず安心できる環境を整えることが先です。
不登校の子どもが何よりも必要としているのは、「家が安全でいられる場所」であることです。ゲームをする子どもに対して頭ごなしに否定すると、最後の逃げ場を奪うことにつながる場合があります。まずお子さんとの対話の土台を作ることが大切です。
2.生活リズムを穏やかに整える働きかけを続けましょう。
昼夜逆転が続いている場合、ゲームを取り上げるよりも「朝、15分だけ起きて一緒に朝食をとる」などの小さな目標から始める方が効果的であることが多いです。急な変化を求めず、少しずつ整えていくアプローチが大切です。
3.お子さんがゲームに求めているものを理解しましょう。
ゲームの中に「達成感」「つながり」「自己肯定感」を求めている場合、ゲームを否定するだけでは根本的な解決にはなりません。ゲームで得ているものを現実の生活の中でも少しずつ感じられるよう、一緒に考えることが支援の核心になります。
専門機関・相談窓口を活用する
家庭内の対応だけでは限界を感じる場合は、専門機関への相談を躊躇わないでください。こども家庭庁(https://www.cfa.go.jp/)では、子どもの福祉・健康に関する相談窓口の案内を行っており、各都道府県の相談先を確認することができます。
また、不登校に関しては文部科学省の生徒指導ページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/)から、各都道府県の教育相談センターや教育支援センター(適応指導教室)の情報を確認することができます。これらの機関では、不登校に関わる相談を無料で受け付けているところが多くあります。
ゲーム依存・インターネット依存が疑われる場合は、医療機関(精神科・心療内科)への相談も選択肢のひとつです。「依存症外来」や「思春期外来」のある医療機関では、子どものゲーム依存に特化した支援を受けられる場合があります。受診のハードルが高いと感じる場合は、まずかかりつけ医や学校のスクールカウンセラーに相談することから始めると、つながりやすくなります。
なお、不登校が長期化したり、通学が難しい状況が続いたりする場合は、通信制高校やサポート校といった別の学びの場を検討することも、お子さんの将来の選択肢を広げることにつながります。
まとめ
ゲームへの没頭と不登校はしばしばセットで語られますが、その関係は「どちらが原因でどちらが結果か」を単純に決めつけられるものではありません。文部科学省の調査(2023年度)では不登校の子どもは約34万6,000人に達しており、その背景は一人ひとり異なります。大切なのは、お子さんがゲームに何を求めているのかを理解し、安心できる環境を整えながら、必要に応じて専門機関につながることです。保護者の方が一人で抱え込まず、学校・医療・相談機関を積極的に活用されることをお勧めします。お子さんのペースを大切にしながら、焦らず一歩ずつ進んでいきましょう。
参考情報
- 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
- 世界保健機関(WHO)ICD-11 Gaming Disorder 定義(2019年) https://www.who.int/standards/classifications/frequently-asked-questions/gaming-disorder
- こども家庭庁 相談窓口のご案内 https://www.cfa.go.jp/
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