「子どもが学校に行けなくなった。自分は何をすればいいのだろう」と、途方に暮れていらっしゃる父親の方も多いのではないでしょうか。仕事でなかなか家にいられない、どう声をかければいいかわからない、母親に任せっきりになってしまっている——そんな後ろめたさを感じていらっしゃるお父さまの気持ちは、とても自然なことだと思います。不登校のお子さんを持つご家庭では、父親がどう動けばよいか悩むことが非常に多いとされています。あなただけではありません。この記事では、父親として今できることを、焦らずゆっくり考えていただけるようお伝えします。
不登校は今や珍しいことではありません
まず、大前提としてお伝えしたいことがあります。お子さんが学校に行けていないことは、決して特別なことでも、失敗でもないということです。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小・中学校における不登校の児童生徒数は約34万6,000人にのぼり、9年連続で増加していることが報告されています(出典:文部科学省 生徒指導 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/)。これは小・中学生の約35人に1人という計算になります。
つまり、多くのクラスに不登校経験のあるお子さんがいるという状況であり、「うちの子だけが……」という状況ではないのです。それでも、実際に自分の子どもが学校に行けなくなったとき、「なぜこうなったのか」「自分たちの育て方が間違っていたのか」と自分を責めてしまう保護者の方は非常に多くいらっしゃいます。不安になりますよね。つらいですよね。そのお気持ちは、それだけお子さんのことを真剣に思っているからこそだと思います。
また、不登校の要因は家庭環境や育て方だけで説明できるものではなく、友人関係・本人の気質・学校環境・社会的背景など多様な要素が複雑に絡み合っています。「誰かのせい」と単純に結論づけることはできませんし、そうすべきでもないと、多くの専門家が指摘しています。まずそのことを知っていただくだけで、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。
父親が感じやすい「どうすればよいかわからない」という感覚
お子さんが不登校になったとき、母親と父親では状況の受け止め方や動き方が異なることがよくあります。母親が学校や相談機関と連絡を取りながらお子さんに寄り添う時間が多い一方で、父親は仕事の関係でどうしても子どもとの接触時間が少なくなりがちです。
「何か言わなければ」と思うあまり、つい「なんで学校に行かないんだ」「いつになったら行くんだ」という言葉が出てしまった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。後から後悔して「あのとき違う言い方があったのに」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。でも、そうした言葉が出てしまう背景には、子どもの将来を心配するからこその焦りがあるはずです。その愛情は、確かにお子さんに届いています。
一方で、こども家庭庁が掲げる「こどもまんなか」の考え方においても、家庭における保護者の関わり方は、子どもの安心感と深く結びついていると位置づけられています(出典:こども家庭庁 https://www.cfa.go.jp/)。父親の存在が、家庭の雰囲気をつくる大きな要素のひとつになっているということです。
だからこそ、「何もできていない」という罪悪感よりも、「今の自分にできることを一つずつやっていく」という姿勢が大切になってきます。仕事から帰宅したとき、お子さんの部屋の前を通りながら「ただいま」と声に出すだけでも、それは立派な関わりの一歩です。
父親だからこそできる関わり方とは
「母親の方が子どもと話しやすそうだから、自分はどうせ……」と感じている父親の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、父親だからこそ果たせる役割があります。
まず大切なのは、「回復を急かさないこと」です。お子さんが今最も必要としているのは、「早く学校に行かなければならない」というプレッシャーのない安全な場所です。父親が帰宅したとき、ただ「おかえり」「今日はどうだった?」と穏やかに声をかけるだけでも、お子さんにとっては大きな安心になります。「今日も家にいてよかった」と感じられる家庭の雰囲気をつくることが、回復への土台になります。
次に、「母親のサポート役になること」も父親の重要な役割のひとつです。不登校の子どもに日々寄り添う母親は、精神的に疲弊してしまうことが少なくありません。父親が母親の話をしっかり聞き、「よくやってくれている」と労うことで、家庭全体が安定しやすくなります。夫婦が互いに支え合っている姿は、お子さんにとっても安心感につながります。
そして、「お子さんとの時間を意識的につくること」も効果的です。学校や勉強の話を抜きにして、一緒にご飯を食べる、好きなゲームや映画を一緒に楽しむ——そういった何気ない時間の積み重ねが、お子さんの心の安定につながっていきます。何か特別なことをしなければならないわけではありません。「一緒にいる」という事実そのものが、お子さんにとっての安心になります。焦らなくて大丈夫です。
また、お子さんが話しかけてきたときに、否定せずにまず「そうか、そうだったんだね」と受け止める姿勢を心がけてみてください。解決策をすぐに提示しようとするよりも、まず「聞いてもらえた」という体験がお子さんの心を開いていきます。
「何もできていない」と感じるお父さまへ
「妻に任せっきりで、自分は何もできていない」と感じている父親の方もいらっしゃるかもしれません。でも、「今日も家族のために仕事を続けている」という事実そのものが、家庭を支える大切な行動です。自分を責めすぎないでください。
不登校の回復には長い時間がかかることがあります。焦って解決しようとするのではなく、「今のお子さんの状態をそのまま受け入れる」という姿勢が、回復への一番の土台になると言われています。完璧な父親でなくてかまいません。ただそこにいて、穏やかでいてくれること——それだけで、お子さんにとって大きな支えになっています。
また、一人で抱え込まず、学校のスクールカウンセラーや教育支援センター、地域の相談窓口などを活用することも選択肢のひとつです。「相談に行くのは恥ずかしい」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、専門家に話を聞いてもらうだけで、気持ちがぐっと楽になることがあります。お子さんのためだけでなく、あなた自身の心を守るためにも、ぜひ選択肢として考えてみてください。
「父親として何かをしなければ」という焦りを手放して、「今日もそこにいてよかった」と自分自身を認めることから始めてみていただければと思います。
まとめ
不登校のお子さんを持つ父親として、「何をすればいいのかわからない」という戸惑いを感じるのは、決して不自然なことではありません。多くの保護者の方が同じ思いを抱えていらっしゃいます。
大切なのは、「早く解決しなければ」と焦るのではなく、今のお子さんをそのまま受け入れ、安心できる家庭の雰囲気をつくっていくことです。父親の穏やかな存在感は、お子さんにとってかけがえのない安全基地になります。あなたの愛情は、必ずお子さんに伝わっています。一人で抱え込まず、必要なときはぜひ専門家や相談窓口の力を借りてみてください。
「完璧な父親」である必要はありません。今日もそこにいて、穏やかに声をかける——その一歩が、お子さんの回復を支える大きな力になっています。
・文部科学省「生徒指導等について(生徒指導上の現状・施策)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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