「うちの子は繊細なだけなのか、それとも不登校になっているのか」――そう感じて戸惑っている保護者の方は、決して少なくないのではないでしょうか。文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小中学校における不登校児童生徒数は約34万6,000人にのぼり、過去最多を更新し続けています。一方で、「HSC(Highly Sensitive Child)」という概念への関心も高まっており、「うちの子はHSCかも」「不登校とHSCは同じこと?」という疑問を持つ保護者の方が増えています。HSCと不登校の違いを丁寧に整理し、お子さんへの理解を深めるための視点をお届けします。
HSCとは何か――「気質」の話です
HSCとは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が1990年代に提唱した概念で、「Highly Sensitive Child(非常に敏感な子ども)」の略称です。「高敏感性」とも呼ばれ、生まれつきの気質のひとつとして位置づけられています。
アーロン博士の研究によると、HSCの子どもは以下のような特徴を持つ傾向があるとされています。
1.感覚的な刺激に敏感で、大きな音・強い光・にぎやかな場所が苦手なことがある
2.他者の感情や場の空気を読み取る力が非常に強く、感情移入しやすい
3.細かいことによく気づき、深く考える傾向がある
4.変化や驚きに対して、強い不安や戸惑いを感じやすい
ここで大切なのは、HSCは「病気」でも「障害」でもないという点です。医学的な診断名ではなく、気質の特性を表す概念です。HSCの子どもは約5人に1人いると言われており(アーロン博士の研究による概算)、決して珍しい特性ではありません。
保護者の方に覚えておいていただきたいのは、HSCはあくまでも「その子が持って生まれた感じ方の特徴」を指す言葉であって、それ自体が「問題」を意味するわけではないという点です。HSCの特性を持つ子どもが豊かな感受性を活かして社会で活躍するケースも多く見られます。
不登校とは何か――「状態」の話です
不登校は、気質ではなく「学校に行けていない状態」を指します。文部科学省は不登校を「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため、年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的理由によるものを除いたもの」と定義しています(出典:文部科学省「生徒指導提要」改訂版 2022年)。
つまり、不登校は「状態」を表す言葉です。その背景にはさまざまな要因があり、いじめ、学業不振、人間関係のつまずき、家庭環境、体の不調(起立性調節障害など)、発達特性など、一人ひとり異なる事情があります。
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、不登校の主な要因として「無気力・不安」が最も多く挙げられており、学校内外の複合的な要因が絡み合っている場合が多いとされています(出典:文部科学省 同調査 2023年度)。
不登校の状態にある子どもには、HSCの気質を持つ子どももいますし、そうでない子どももいます。不登校とHSCは、原因と結果の関係にあるわけでも、イコールの関係にあるわけでもありません。
HSCと不登校の違いを整理する
ここで2つの概念の違いを整理してみましょう。
HSCは「気質・特性」の話であり、生まれつきのものです。それ自体は不登校の原因でも結果でもありません。一方、不登校は「現在の状態」の話であり、さまざまな要因が重なった結果として生じるものです。
整理するとこうなります。
1.HSCの子どもが不登校になることはあります。感覚過敏や強い不安感から学校環境になじめず、登校が難しくなるケースも実際に見られます。
2.HSCでも不登校にならない子どもはたくさんいます。HSCの特性を持ちながら、家庭や学校のサポートを受けて毎日元気に通学している子どもも多くいます。
3.HSCではなくても不登校になることはあります。いじめ・人間関係・起立性調節障害・家庭の事情など、HSCとは関係のない理由で登校できなくなるケースも数多くあります。
つまり、「HSC=不登校」という図式は成り立ちません。混同してしまうと、お子さんへのサポートの方向性が変わってしまいますので、2つの概念を分けて考えることが大切です。
保護者が大切にしたい視点――正確に理解することが第一歩です
「うちの子はHSCだから学校に行けないのだ」と早急に結論づけてしまうと、別の要因が見落とされる可能性があります。逆に「HSCというだけで不登校を心配しすぎる」ことも、お子さんにとっての負担になる場合があります。
こども家庭庁は「こどもの視点に立って意見を聴き、こどもにとっていちばんの利益を考える」ことを基本姿勢として掲げています(出典:こども家庭庁 公式サイト 2024年)。これは保護者の方にとっても重要な視点です。まず、お子さん自身がどんなことに困っているのかを丁寧に聞き取ることが、支援の第一歩になります。
お子さんの様子について気になることがある場合は、以下のような専門家・相談窓口への相談が選択肢として挙げられます。
1.学校のスクールカウンセラー(心理的なアセスメントが可能です)
2.教育支援センター・適応指導教室(不登校支援の専門機関です)
3.小児科・児童精神科(体の不調や発達特性が絡む場合に有効です)
4.教育委員会や市区町村の相談窓口(文部科学省・こども家庭庁が整備を進めています)
HSCかどうか、不登校かどうかよりも、「今、この子に何が必要か」を軸に考えることが大切です。
まとめ
HSCは生まれつきの「気質・特性」であり、不登校は「学校に行けていない状態」を指します。2つはまったく別の概念で、「HSCだから不登校になる」「不登校の子どもは皆HSCだ」という図式は成り立ちません。文部科学省の調査では不登校児童生徒数が過去最多水準にあることが示されており、その背景は一人ひとり異なります。大切なのは、ラベルよりも「今、お子さんに何が必要か」を丁寧に見極めることです。疑問や不安を感じたときは、一人で抱え込まず、学校や専門機関にまず相談することをお勧めします。お子さんのペースを大切にしながら、一緒に考えていきましょう。
参考情報
- 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
- 文部科学省「生徒指導提要」(2022年改訂版) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
- こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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