「不登校だったことを、志望理由書にどう書けばいいのか……」。通信制高校への進学や、高卒認定取得後の大学・専門学校受験を控えた保護者の方から、こうした悩みをよく耳にします。不登校の経験をそのまま書いていいのか、書かないほうがいいのか、正直なところ判断に迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。この記事では、不登校経験のある方が志望理由書を書く際に押さえておきたい考え方と、具体的な構成の作り方を順を追って整理します。
そもそも志望理由書とは何を見るための書類なのか
志望理由書とは、学校・大学・専門学校が出願者に求める書類で、「なぜこの学校・学部・学科を選んだのか」「入学後に何を学びたいのか」「将来どうなりたいのか」を文章で伝えるものです。つまり、成績や学力ではなく「考える力」と「意欲」を伝えるための書類だといえます。
推薦入試・総合型選抜(AO入試)では特に重視されることが多く、通信制高校から大学を目指す場合も、この書類が合否を左右するケースがあります。
文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(2023年度)によると、小・中学校における不登校児童生徒数は約34万6,000人に達しており、過去最多を更新しています。不登校経験を経て進路を切り開こうとしている方の数は、決して少なくありません。志望理由書は、そうした経験を「不利な事実」としてではなく、「自分がどう考え、どう動いたか」を伝える場として活用できます。
まず大切なのは、「志望理由書は謝罪文ではない」という認識を持つことです。不登校であったことをことさら詫びる必要はなく、そこから何を感じ、何を考えたかを率直に書くことが、読み手に伝わる文章につながります。
不登校の経験をどう書くか:4つの構成ステップ
志望理由書の書き方に「絶対の正解」はありませんが、読み手が理解しやすい流れとして、以下の4ステップを参考にしてください。
1.きっかけ(何があったか・どんな状態だったか)
不登校になった時期や背景を、事実として簡潔に触れます。詳細を書く必要はなく、「高校1年生の途中から、体調の不調を理由に通学が難しくなりました」程度の一文で十分です。ここで大切なのは「ありのまま」を書くことで、自己否定の言葉(「何もできませんでした」「ダメな時期でした」など)は避けてください。
2.その時期に考えたこと・気づいたこと
学校に行けなかった期間に何をしていたか、何を感じたか、何に関心を持ったかを書きます。読書・オンライン学習・ボランティア・アルバイト・資格取得など、前向きな活動があれば積極的に書いてください。活動がなかった場合も、「自分がどう生きたいかを考えるきっかけになった」という内省を書くことができます。
3.なぜこの学校・学部を選んだのか(志望動機の核心)
2番の気づきが、どのように志望動機へとつながったかを書きます。「この体験があったから、△△を学びたいと思った」という流れを明確にすることで、説得力が生まれます。
4.入学後に何をしたいか・将来の展望
具体的に書けるほど、読み手の印象に残ります。「△△の授業で○○を学び、□□の仕事に活かしたい」のように、学校のカリキュラムや特色と結びつけて書くと効果的です。
書いてよいこと・書かなくてよいこと
不登校経験を志望理由書に書く際には、何を書いて何を省くかの判断が重要です。以下に整理します。
「書いてよいこと」としては、不登校だった事実(時期・状況を簡潔に)、その期間に自分が取り組んだこと、考えたこと・変化した価値観、志望校を選んだ具体的な理由、入学後の目標や将来像が挙げられます。
「書かなくてよいこと」としては、不登校の原因の詳細(いじめ・家庭の事情など、プライベートに踏み込む内容)、自分を責める表現、他者(教師・保護者・友人)への批判、「普通の高校生活が送れなかった」などの比較表現が挙げられます。
不登校経験者を積極的に受け入れている通信制高校やサポート校では、入学後のサポート体制も整えている機関が増えています。こうした学校への志望理由書では、「なぜこの学校の仕組みが自分に合っていると思ったか」を具体的に書くことが、特に有効です。
通信制高校・高卒認定からの大学受験で書く場合の注意点
高卒認定を取得して大学・専門学校を受験する場合や、通信制高校を卒業して進学する場合、志望理由書の書き方には追加で意識したいポイントがあります。
まず、「高卒認定を取得した」という事実は積極的に書いてください。学力を自ら証明したことは、主体的な行動の証です。高校中退・不登校・通信制高校出身者を対象に基礎から大学受験までサポートする機関では、不登校後に自律的に学習を再開した経験そのものが評価される傾向があります。進路相談の場でも、こうした経緯を積極的に伝えるようにしてください。
次に、通信制高校での学習経験も、書き方次第で強みになります。「自己管理のもとで単位を取得した」「レポート提出や試験に自分で計画を立てて取り組んだ」という経験は、大学での自律的な学習姿勢をアピールする材料になります。
また、総合型選抜(AO入試)では、書類だけでなく面接や小論文とセットで選考される場合が多くあります。志望理由書で書いたことを自分の言葉で話せるように、書き終えたあとに声に出して読む練習をしておくと安心です。
まとめ
不登校の経験は、志望理由書に書いてはいけないものではありません。大切なのは、その経験を通じて「自分がどう変わり、何を学びたいと思ったか」を、読み手に伝わる言葉で書くことです。4つの構成ステップ(きっかけ・気づき・志望動機・将来の展望)に沿って整理すると、内容が自然にまとまります。
文部科学省のデータが示すように、不登校を経験している方の数は年々増えており、そこから進路を切り開く方も多くいます。志望理由書は「過去の説明」ではなく「未来への意思表示」です。お子さんがどう歩んできたかを、自分の言葉で書く練習から始めてみてください。進路指導の担当者や支援機関のスタッフに文章を見てもらうことも、ぜひ積極的に活用してください。
参考情報:
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「高等学校通信教育の現状」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tsushin/
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