朝、子どもが「今日は学校に行きたくない」とつぶやいた。そのとき、どう返せばよいか迷った経験はないでしょうか。叱るべきか、休ませるべきか、受け入れるべきか——正解がわからず、途方に暮れる保護者の方は少なくありません。この記事では、不登校の現状データを確認しながら、子どもが「行きたくない」と言い始めたときに保護者の方が知っておきたい初期対応の考え方を順序立てて整理します。
「行きたくない」は今、珍しいことではありません
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小中学校における不登校の児童生徒数は34万6,482人に上り、過去最多を更新しました(出典:文部科学省、2024年10月公表)。これは小中学校全体のおよそ3.7%にあたる数字であり、30人学級で換算すると1クラスに1人以上の割合です。
この数字が示すのは、「わが子だけがこんな状況だ」という保護者の方の孤独感は、事実と異なるということです。お子さんが「行きたくない」と言ったとき、それは今の子どもたちの間でとても広く起きていることです。「学校に行けないのはうちの子が特別おかしいのではないか」と自分を責めている保護者の方に、まずこの事実をお伝えしたいと思います。
また、文部科学省が定義する「不登校」は「年間30日以上の欠席」を指しますが、実際には「行き渋り」や「欠席が数日の段階」から相談・対応を始めることが、状況の悪化を防ぐうえで重要とされています(出典:文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」2022年12月)。「まだ数日だから」と様子を見すぎるよりも、早い段階から適切な対応を取り始めることが大切です。
最初の3日間で「してはいけないこと」と「すべきこと」
子どもが「行きたくない」と言い始めた最初の数日間は、保護者の方の対応が今後の経過に大きく影響するといわれています。文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」では、不登校支援の基本として「児童生徒の思いや状況を丁寧に把握すること」が強調されており、頭ごなしの否定や強制的な登校刺激は避けることが推奨されています。
具体的に、最初の段階で「しないほうがよい対応」を整理すると次のようになります。
1.「甘えるな」「みんな行っているのに」など、他の子どもと比較する声かけ
2.「なぜ行けないのか」という理由の追及(本人も言語化できていないことが多いためです)
3.無理に連れて行こうとする身体的な強制
一方で、「すべき対応」としては次の点が挙げられます。
1.まず「つらいんだね」と共感の言葉を伝える
2.身体症状(頭痛・腹痛・吐き気など)がないかを確認する
3.学校の担任や養護教諭に状況を連絡し、情報を共有する
特に身体症状は見落とされやすい点です。起立性調節障害など身体的な原因が不登校の背景にある場合もあるため、症状が続く場合はまず小児科への相談をお勧めします(詳しくは専門の医療機関にご相談ください)。
「休ませる」判断は失敗ではありません
「休ませたら、そのまま学校に戻れなくなるのでは」という不安を持つ保護者の方は多くいらっしゃいます。しかし、文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」(2019年通知)では、「不登校は取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こりうる」と明記され、登校を強制することよりも「社会的な自立」を目標とした多様な支援を重視する方向性が国として示されています。
つまり、「学校に戻す」ことだけが唯一の正解ではなく、子どもの状態を安定させることが第一のステップであるという考え方が公式の指針においても採用されています。
「休む」という選択をした場合、保護者の方がとれる行動として以下が考えられます。
1.学校との連絡は定期的に続ける(担任・スクールカウンセラーと週1回程度の情報共有が目安です)
2.教育支援センター(適応指導教室)の利用を検討する(通所が難しい場合はオンライン相談も増えています)
3.フリースクールや学習支援の場を情報収集する
法務省「子どもの人権110番」やこども家庭庁の各相談窓口では、子どもや保護者の方が利用できる相談先が整備されており、24時間対応のものも含まれています(出典:こども家庭庁公式サイト、2025年時点)。一人で抱え込まず、まず相談することから始めてみてください。
長期化したときに使える「学びの場」の選択肢
欠席が続き、在籍校への復帰が難しいと感じ始めた段階では、「別の場所で学ぶ」という選択肢を視野に入れることが重要です。不登校が長期化した場合の進路として代表的な選択肢を整理すると、次のようになります。
「教育支援センター(適応指導教室)」:公立の支援機関です。学習支援と生活リズムの立て直しを同時に行い、在籍校の出席扱いになる場合があります。費用は基本的に無料です。
「通信制高校」:自宅学習を中心に、自分のペースで高校卒業を目指す制度です。登校頻度を自分で選べるため、外出が難しい時期でも学習を継続できます。
「サポート校」:通信制高校に通う生徒の学習・生活を支援する民間施設です。手厚い個別対応が特徴で、不登校経験のある生徒を積極的に受け入れているところが多くあります。
「高卒認定試験」:高校に在籍せずに大学受験資格を得る方法です。年2回実施されており、中学卒業(見込みを含む)以上であれば受験できます。
子どもが中学生の段階であれば、これらの選択肢をあらかじめ知っておくだけで、保護者の方の焦りが和らぐことも少なくありません。「この道しかない」ではなく、「別のルートもある」という認識は、親子双方にとって大きな安心材料になります。
まとめ
「学校に行きたくない」という子どもの言葉は、サインです。叱って解決できるものでも、放置してよいものでもなく、まず共感し、身体症状を確認し、学校と連絡を取りながら「一緒に考える」姿勢が第一歩です。文部科学省のデータが示す通り、不登校の子どもは今や34万人を超えており、支援制度や相談窓口も以前より充実しています。保護者の方が一人で答えを出そうとせず、スクールカウンセラーや地域の相談窓口を積極的に活用することをお勧めします。まずは「今日の一歩」として、学校の担任かスクールカウンセラーに連絡を入れてみてください。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和5年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」2022年12月 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト・相談窓口案内 https://www.cfa.go.jp/
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