「このまま進級できなかったら、どうすればいいのだろう」と、頭を抱えている保護者の方も多いのではないでしょうか。不登校が続いた結果として留年が現実になったとき、あるいは留年の可能性が見えてきたとき、焦りと不安が重なって情報を探してもなかなか整理できないという声はよく聞かれます。まず伝えたいのは、留年はゴールではなく、新しい選択肢を考えるための「分岐点」だということです。高校での留年の仕組みから、通信制高校・高卒認定・転校など具体的な選択肢まで、順を追って整理していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
高校で「留年」が決まる仕組みを正確に理解する
まず前提として、高校では義務教育と異なり「進級に必要な条件」が定められています。多くの全日制高校では、1年間に取得すべき単位数が設定されており、それを満たせなかった場合に留年(原級留置)となります。
留年の主な原因は、次の2つに整理できます。
1.出席日数の不足:多くの高校では、各授業科目について授業時数の3分の1以上を欠席すると単位が認定されない仕組みになっています。つまり欠席が続けば、テストの点数にかかわらず単位を落とす可能性があります。
2.定期試験・課題の未提出:出席だけでなく、試験や課題の未実施が重なると修得単位数が基準を下回ります。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、高等学校の不登校生徒数は68,770人に上っており(出典:文部科学省 同調査 2023年度版)、進級や卒業に課題を抱えるケースが広がっていることがうかがえます。
ここで重要なのは、「留年が確定する前に学校と相談できる段階がある」という点です。出席状況が危うくなったと感じたら、担任や学校のスクールカウンセラーへ早めに連絡を取ることで、補講や別室対応など学校側の配慮を引き出せる場合があります。まずは現状の出席数と必要単位数を学校に確認することから始めましょう。
留年した場合に取り得る4つの選択肢
留年が決まったとき、選択肢は一つではありません。お子さんの状態や希望に合わせて、以下の4つの方向性から考えることができます。
1.そのまま同じ高校で再履修する
留年したまま同じ学校に通い続けることも選択肢の一つです。環境に慣れている・友人関係が続いている場合は、学校側と支援体制(スクールカウンセラーの活用・別室登校など)を相談しながら続けられる場合があります。ただし、環境そのものがお子さんの負担になっている場合は、この選択が回復を妨げることもあるため、慎重に判断することが大切です。
2.通信制高校へ転入・編入する
通信制高校は年間数回のスクーリング(登校)と自宅学習を組み合わせて単位を取得する仕組みです。それまでに取得した単位を引き継いで転入できる「単位認定制度」があるため、1年生からやり直すのではなく、すでに取得した単位を活かして編入学できます。自分のペースで学べるという点で、不登校の回復期にあるお子さんに向いている選択肢の一つです。
3.高卒認定試験(高校卒業程度認定試験)を目指す
高卒認定試験は、文部科学省が年2回(8月・11月)実施する国家試験です。合格することで「高校卒業と同等以上の学力がある」と認定され、大学・短大・専門学校の受験資格を得ることができます。高校を退学・休学したままでも受験できるため、学校という環境から距離を置いている時期でも進路をつないでおける選択肢です。
4.サポート校・フリースクールを活用しながら立て直す
通信制高校に籍を置きつつ、サポート校(民間の学習支援施設)に通うという形もあります。「通信制高校の単位取得サポート」と「大学受験対策」を同時に行える機関も存在します(出典:河合塾COSMO公式サイト 2026年5月取得)。フリースクールは高卒資格に直結はしませんが、生活リズムの回復や対人関係の再構築を段階的に進める場として活用できます。
通信制高校の「単位引き継ぎ」の仕組みを理解する
転入・編入を検討する際に保護者の方から多く聞かれる疑問が「今まで高校で取った単位は無駄になるの?」というものです。結論から言えば、取得済みの単位は多くの場合そのまま引き継ぐことができます。
仕組みを順番に説明します。
1.在籍中の高校に「単位修得証明書」を発行してもらいます。
2.転入先の通信制高校に提出し、認定される単位数を確認します。
3.引き継いだ単位数をもとに、残り必要な単位数を計算して卒業計画を立てます。
たとえば、1年生を終えて留年になった場合でも、1年生のうちに取得できた単位(例:国語総合や数学Iの一部など)は引き継げる可能性があります。ただし、転入先の学校によって認定できる単位の範囲が異なるため、複数の通信制高校に問い合わせて比較することをおすすめします。
また、転入と編入では入学のタイミングが異なります。転入とは、在籍中に別の高校へ移ることで、学期途中でも対応できる学校が多いです。編入とは、一度退学してから別の高校へ入学し直すことで、4月・10月など入学時期が限られる場合が多いです。退学前に転入手続きを行う方が、単位の引き継ぎ面でも有利なケースが多い傾向があります。
高卒認定試験を選ぶ場合に知っておきたいこと
高卒認定試験は「高校を卒業しなくても大学を受験できる資格」として知られますが、正確には「高校卒業資格」そのものではないという点は押さえておきましょう。つまり、就職活動などで「最終学歴:高校卒業」とは表記できません。一方、大学に合格して卒業すれば最終学歴は「大学卒業」となるため、大学進学を目指している場合は高卒認定試験は十分に有効な選択肢です。
試験科目は国語・数学・英語・理科(2科目)・社会(2〜3科目)など合計8〜10科目で、一度に全科目合格する必要はなく、合格した科目は次回以降に持ち越せる仕組みです。文部科学省「令和5年度 高等学校卒業程度認定試験実施結果」によると、2023年度の受験者数は約16,800人、合格率は約44%でした(出典:文部科学省 令和5年度高等学校卒業程度認定試験実施結果)。全科目合格が条件のため合格率はやや低く見えますが、科目別に積み上げていける試験形式であることは、受験を検討している方にもぜひ理解していただきたい点です。
まとめ
不登校の結果として留年が現実になったとき、「終わりではなくスタートの分岐点だ」という視点を持つことが、保護者の方にとっても大切です。同じ高校での再履修・通信制高校への転入・高卒認定試験の取得・サポート校の活用など、選べる道は複数あります。取得済みの単位を活かしながら通信制高校へ移る方法や、年2回の高卒認定試験で少しずつ科目をクリアしていく方法は、お子さんの回復状況に合わせて組み合わせることも可能です。
まず取るべき行動として、1)現在の在籍校に出席日数と取得単位数を確認する、2)通信制高校の資料請求や個別相談を利用してみる、3)文部科学省の相談窓口やスクールカウンセラーに状況を話す——この3つから始めてみてください。焦らず、お子さんのペースを軸に選択肢を探していきましょう。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和5年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「令和5年度 高等学校卒業程度認定試験実施結果」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/syougakkou/index.htm
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・通信制高校への転入・編入の手続きと時期:https://futoukou.co.jp/correspondence-school/
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