子どもが学校に行けなくなったとき、夫婦の間で意見がぶつかってしまった経験はありませんか。「もっと厳しくすべき」「いや、今は休ませるべき」——同じ屋根の下で、同じ子どものことを思いながらも、方針が全く正反対になってしまうことは、多くの家庭で起きていることです。そのすれ違いに気づいたとき、「自分たちは間違っているのだろうか」と感じてしまう保護者の方も少なくないのではないでしょうか。あなただけではありません。そして、その対立自体が、あなたたちがそれだけ真剣に子どもと向き合っている証でもあります。
なぜ夫婦で意見が対立してしまうのか
子どもが不登校になったとき、夫婦の間で意見の相違が生まれやすいのには、いくつかの背景があります。
まず、それぞれが育った環境や価値観が異なることが大きな要因のひとつです。「学校は絶対に行くべき場所だ」という価値観で育った人と、「無理に行かなくていい」という考え方を持つ人が一緒に子育てをするとき、意見がぶつかるのはある意味では自然なことです。どちらが正しい・間違いという問題ではなく、それぞれの経験や信念から来るものですから、どちらの視点も否定されるべきではありません。
また、情報量の差も対立の原因になります。不登校に関する情報を積極的に調べている保護者の方と、あまり調べていない保護者の方とでは、現状認識に大きなギャップが生まれます。「なぜそんなことも知らないの」「なぜそんなに心配するの」というすれ違いは、情報の差から来ていることが多いのです。
さらに、子どもへの接触時間の違いも影響します。日中、子どもと多くの時間を過ごしている保護者の方は、子どもの「しんどさ」を肌で感じています。一方で、仕事で外にいることが多い保護者の方には、その感覚が伝わりにくいことがあります。「大げさではないか」「もう少し様子を見ればいい」という言葉が、どれほど日常を支えている側に刺さるかは、想像に難くないと思います。
つらいですよね。毎日子どもの傍にいながら、パートナーにその重さを理解してもらえないと感じるとき、孤独感はいっそう深まります。その気持ちは、決して大げさではありません。
対立が子どもに与える影響について知っておくこと
夫婦間の意見の対立は、子どもにも影響を与える場合があります。子どもは大人が思っている以上に、家の空気に敏感です。「自分のせいで親が揉めている」と感じてしまう子どもも多く、それがさらに自己肯定感を下げてしまうことがあります。
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2023年度)」によると、小中学校における不登校の児童生徒数は約34万6千人にのぼり、過去最多を更新し続けています。これほど多くの家庭が同じ状況に直面しているということは、夫婦間の対立が生じるケースも決して少なくないことを示唆しています(出典:文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』2023年度)。
ここで大切なのは、「対立があること」を責め合うのではなく、「子どもにとって家が安心できる場所であること」を共通の目標として持ち続けることです。意見が違っても、子どもを大切に思う気持ちは同じはずです。その共通の思いを起点に話し合うことが、解決への糸口になるかもしれません。
また、子どもの前で意見をぶつけることは、できるだけ避けるようにするとよいでしょう。意見の相違を話し合う場は、子どものいない時間帯に設けることが、子どもの安心感を守るためのひとつの選択肢です。
対立を「話し合い」に変えるための向き合い方
意見が対立したとき、すぐに解決策を求めようとすると、かえって話し合いが感情的になってしまうことがあります。まず大切なのは、お互いの「不安」を話すことです。「もっと厳しくすべき」という言葉の背景には、「このまま社会に出られなくなったらどうしよう」という不安があるかもしれません。「ゆっくり休ませたい」という言葉の背景には、「無理させてまた傷つけたくない」という怖さがあるかもしれません。
方針を決めようとする前に、まず「自分が何を怖れているか」「何を大切にしたいか」を話し合うことで、対話の質が変わることがあります。結論を出すことより、相手の気持ちを理解しようとすることを優先してみてください。
また、どちらか一方が全ての情報を抱え込まず、一緒に専門機関に相談に行くという選択も有効です。スクールカウンセラー、教育相談センター、不登校の支援団体など、第三者の専門家を交えることで、夫婦間では難しかった話し合いがスムーズに進むことがあります。こども家庭庁が整備している相談窓口や、各自治体の教育相談センターも活用できる選択肢のひとつです(参考:こども家庭庁公式サイト https://www.cfa.go.jp/)。
「夫婦で答えを出さなければ」と思うと苦しくなりますよね。でも、一人で、あるいは二人だけで抱え込まなくても大丈夫です。専門家に話を聞いてもらうことで、気持ちが整理されることは多くあります。
パートナーを「説得」しようとしなくていい
夫婦の対立が続くとき、「なんとか相手を説得しなければ」と感じてしまう保護者の方は多いのではないでしょうか。しかし、説得しようとすればするほど、相手は防衛的になりやすく、かえって距離が開いてしまうことがあります。
ここで提案したいのは、「正しさを争うのをやめる」という視点の転換です。不登校の対応に「絶対的な正解」はありません。子どもの状態、家庭の環境、学校との関係など、すべての条件が異なるからこそ、何が最善かは一つではないのです。だからこそ、どちらかが完全に正しくてどちらかが完全に間違いということも、ほとんどの場合ありません。
「今のこの子に何が必要か」という問いを、二人で一緒に考える姿勢が持てると、対立は少しずつ対話に変わっていく可能性があります。意見が違うことは、むしろ多角的に子どもを見守れるということでもあります。
あなたの愛情は、必ずお子さんに伝わっています。夫婦で悩みながら子どものことを考えているその時間そのものが、お子さんへの大きな愛情の表れです。
まとめ
子どもの不登校をめぐって夫婦の意見が対立することは、決して珍しいことではありません。大切なのは、その対立を「どちらが正しいか」の争いにするのではなく、「子どもにとって何が安心か」を共に探る出発点にすることです。一人で抱え込まず、スクールカウンセラーや教育相談センターなど、第三者の力を借りることも有効な選択肢のひとつです。まず、パートナーと「不安」を話し合うことから始めてみてください。あなたとパートナーが同じ方向を向けるよう、焦らず一歩ずつ進んでいけると思います。大丈夫です。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2023年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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