子どもが不登校になり、高校卒業後の進路をどうするかを考えていると、「浪人という選択肢はあるのだろうか」と疑問を持つ保護者の方も多いのではないでしょうか。「浪人=全日制高校卒業者がするもの」というイメージが根強く、不登校経験のあるお子さんには関係ない話と感じてしまうかもしれません。しかし、通信制高校や高卒認定試験というルートを経ながら、大学受験に再挑戦する「浪人」という選択は、現実に存在する道のひとつです。制度の仕組みを正確に理解することで、「うちの子にも選択肢があった」という気づきにつながれば幸いです。
「浪人」とは何か――前提を整理します
まず、「浪人」という言葉の定義から確認しておきましょう。浪人とは、高校卒業(または高卒同等の資格取得)後に、大学へ現役合格できなかった、あるいはあえて進学しないまま翌年の入試に向けて受験勉強を続ける期間のことを指します。
ここで重要なのは、「高校卒業資格」または「高校卒業と同等の学力があると認められること」が大学受験の前提条件になっているという点です。具体的には、以下の3つのルートが大学受験の受験資格として認められています。
1.全日制・定時制・通信制高校を卒業すること
2.高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)に合格すること
3.18歳以上で、文部科学省が指定する要件を満たすこと
つまり、不登校を経て通信制高校を卒業したお子さんも、高卒認定試験に合格したお子さんも、大学受験の受験資格を持っています。受験資格さえあれば、「浪人」という選択をすることは制度上、何ら問題ありません。
「不登校経験者は浪人できない」という思い込みは、制度的には根拠のないものです。卒業・合格後の翌年に大学入試を再受験することは、ほかの受験生と同じように認められています。
不登校から大学を目指すルートと「浪人」の位置づけ
不登校を経験したお子さんが大学進学を目指す場合、大きく分けて3つのルートがあります。
1.通信制高校を卒業し、現役で大学進学を目指すルート
2.高卒認定試験に合格し、大学受験の資格を取得するルート
3.上記1または2を経て、現役合格を目指したが叶わず、あるいはあえて翌年に備えて「浪人」するルート
3番目のルートが、今回お伝えしたい「不登校経験後の浪人」という選択です。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、不登校の小中学生の数は約34万6,000人に上っており、高校生の不登校も約6万8,000人が確認されています(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度)。これほど多くのお子さんが不登校を経験しているにもかかわらず、「その後の大学受験でどんな選択肢があるか」について詳しく知る機会は、まだ十分ではない状況があります。
不登校からの大学受験には、現役合格を目指すことも、浪人を経て挑戦することも、どちらも現実的な選択肢です。「1年間、じっくり体調を整えながら勉強したい」「高卒認定を取ったばかりで、受験準備が十分でなかった」といった事情がある場合、浪人という時間を戦略的に活用することが、お子さんの可能性を広げる場合があります。
浪人期間に利用できる支援機関を知っておきましょう
浪人中の学習環境として、不登校経験者や高校中退者を対象にした支援機関が存在することは、ぜひ知っておいていただきたい情報です。
こうした機関では、基礎学力の補強から大学受験レベルの対策までをカバーするカリキュラムが組まれており、生徒一人ひとりのペースや状況に配慮したサポートを行っているところも増えています。不登校やひきこもりを経験したお子さんが抱えがちなデリケートな悩みと向き合う体制を整えている機関もあり、大手予備校とは異なるアプローチで受験準備を進めることができます。
また、通信制高校との「ダブルスクール」という形での活用実績を持つ機関もあり、高卒資格の取得と受験対策を並行して進めることができるという特徴があります。浪人中に高卒認定や通信制高校の単位修得を進めながら、受験勉強にも取り組む、という選択肢です。
こうした機関の存在を知ることで、「浪人=予備校に毎日通って勉強しなければならない」という固定観念から離れ、お子さんの体調やペースに合った学び方を選べるようになります。浪人期間の過ごし方は、一律に決まっているわけではありません。
浪人を選ぶ前に確認したい3つのポイント
浪人という選択を検討する際に、事前に整理しておきたい点があります。以下の3つを、お子さんと一緒に考えてみてください。
1.受験資格が整っているかどうかを確認する
通信制高校を卒業しているか、高卒認定試験に合格しているかによって、大学受験の受験資格が変わります。高卒認定試験は年2回(8月と11月)実施されており、18歳の年度から大学受験の出願が可能になります(出典:文部科学省 高等学校卒業程度認定試験公式ページ)。まず現在の状況を確認することが最初の一歩です。
2.体調・メンタルの状態を専門家と相談する
不登校の背景には、身体的・精神的なさまざまな要因がある場合があります。浪人という選択が本当にお子さんに合っているかどうかは、スクールカウンセラーや医師などの専門家の意見を参考にしながら判断することをおすすめします。
3.1年間の具体的な学び方のイメージを持つ
「浪人する」と決めた場合でも、大手予備校に通う方法、自宅学習を中心にする方法、通信制高校のサポート校を活用する方法など、複数の選択肢があります。どの環境がお子さんに合っているかを、費用・通いやすさ・サポート体制の観点から比較して選ぶことが大切です。
まとめ
不登校を経験したお子さんが「浪人」を選ぶことは、制度上何ら問題なく、現実に存在する選択肢のひとつです。通信制高校の卒業や高卒認定試験の合格を経て、大学受験に再挑戦することは、全日制高校出身の受験生と同じ権利として認められています。
大切なのは、お子さんの状態に合った環境を選ぶことです。不登校経験者を対象にした学習支援の場も着実に広がっており、体調やペースに配慮しながら受験準備を進める環境を選ぶことが可能になっています。
「まず制度を正確に知ること」が、選択肢を広げる第一歩になります。お子さんのペースを大切にしながら、焦らず一歩ずつ情報を集めてみてください。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省 高等学校卒業程度認定試験 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/
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