「一日中ゲームばかりしていて、このままで大丈夫なのか」と感じている保護者の方は、決して少なくないはずです。文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小・中学校における不登校児童生徒数は約34万6千人にのぼり、過去最多を更新しています(出典:文部科学省、2023年度調査)。学校に行けない時間が増えるほど、ゲームや動画視聴に費やす時間も長くなりやすく、保護者の方が「何とかしなければ」と感じるのは自然なことです。ただ、頭ごなしにルールを押しつけても、関係が悪化するばかりで解決には向かいにくいものです。この記事では、不登校のお子さんとゲームのルールを考えるうえで大切な視点と、実践しやすい話し合いの進め方を整理してお伝えします。
不登校中のゲームは「問題行動」ではない
まず知っておいていただきたいのは、不登校のお子さんがゲームに没頭すること自体は、怠けや反抗心の表れではないという点です。
学校に行けない状態にある子どもにとって、ゲームは数少ない「自分がコントロールできる世界」である場合が多くあります。ゲームの中では自分のペースで進められ、失敗しても何度でもやり直せ、達成感を得られます。学校という場では思うようにいかない経験を重ねているお子さんにとって、ゲームが心の安全基地になっていることは珍しくありません。
文部科学省が2022年に改訂した「生徒指導提要」では、子どもの問題行動を表面だけで判断せず、その背景にある心理的・社会的要因を丁寧に読み取ることの重要性が強調されています(出典:文部科学省「生徒指導提要」2022年12月改訂)。ゲームへの過度な没頭も、まずは「なぜそこに向かっているのか」を理解しようとする姿勢が出発点になります。
もちろん、睡眠不足や昼夜逆転、食事の乱れなど、生活リズムへの影響が出ている場合は別の対応が必要です。「ゲームをしていること」よりも「生活が崩れていること」に焦点を当てると、話し合いの方向性が定まりやすくなります。
ルール設定の前に必要な「対話の土台」
保護者の方がルールを設定したくなる気持ちはよく理解できますが、一方的に「1日2時間まで」「夜10時以降は禁止」などを言い渡すだけでは、反発や無視につながりやすい傾向があります。
ルールを機能させるためには、お子さん自身が「自分が決めたこと」と感じられる仕組みが必要です。具体的には、次のような順序で進めることが有効だと考えられています。
1.まずお子さんの話をとにかく聞くことから始めます。どんなゲームが好きなのか、何が楽しいのかを否定せずに聞きます。
2.「最近ちょっと心配していることがあって」と保護者の側の気持ちを「I(アイ)メッセージ」で伝えます。「あなたはゲームしすぎ」ではなく「夜遅くまでゲームしているのを見て、体が心配になっているよ」という言い方です。
3.一緒にルールを考える場を設けます。「どうしたらお互い納得できるか、一緒に考えたい」と投げかけてみてください。
4.決まったルールは紙に書いて貼るなど、視覚化します。
5.2週間ほど試して、うまくいかない部分は話し合って見直します。
この流れで進めることで、ルールが「管理」ではなく「約束」として機能しやすくなります。こども家庭庁は、こどもの意見を尊重しながら支援を進めることを政策の柱に掲げており(出典:こども家庭庁 公式サイト、2023年)、家庭内のルール設定でも同じ姿勢が活かされます。
実践しやすいルール設定の考え方
では、具体的にどのようなルールが実践しやすいのでしょうか。いくつかのポイントに分けて整理します。
「時間」について考えるとき、1日何時間という絶対的な数字よりも「夕食後は一緒に過ごす時間を30分つくる」「就寝前1時間はゲームをオフにする」など、他の生活習慣と組み合わせた形のほうが受け入れられやすい傾向があります。
「場所」については、自室のみでなくリビングでもゲームできる環境にすると、保護者が様子を把握しやすくなります。ただし、監視のためではなく「一緒の空間にいる時間をつくる」という目的で伝えることが大切です。
「睡眠リズム」の維持は特に重要です。不登校中に昼夜逆転が続くと、回復のタイミングが遅れやすくなるという傾向が見られます。「何時以降はゲームをオフにする」というルールは、健康管理の観点からも話し合いやすい切り口です。
一方で、ルールを厳しくしすぎることのリスクも知っておいてください。強制的にゲームを取り上げたり、Wi-Fiを切ったりする対応は、お子さんとの信頼関係を壊すリスクがあります。ゲームが心の支えになっている時期には、急激な制限が逆効果になることもあります。
専門家・相談窓口への連携も選択肢のひとつ
家庭内だけでゲームとルールの問題を解決しようとしても、煮詰まってしまうことは少なくありません。そのような場合は、外部の相談窓口を活用することも有効な選択肢です。
こども家庭庁は、子どもに関するさまざまな相談を受け付ける窓口の案内を公式サイトで提供しています(出典:こども家庭庁 公式サイト)。また、各自治体の教育支援センター(適応指導教室)や、スクールカウンセラーもゲームとの向き合い方について相談できる場です。
「ゲームをやめさせたい」という目的で相談するよりも、「子どもの今の状態を理解したい」「どう関わればいいかわからない」という形で相談するほうが、より的確なアドバイスを得やすくなります。
なお、ゲームへの依存的な傾向が強く、日常生活に著しい支障が出ている場合は、医療機関への相談も検討してみてください。ゲーム障害(Gaming Disorder)は2019年にWHOが国際疾病分類(ICD-11)に追加した概念ですが、診断には専門的な評価が必要です。お子さんの様子が気になる場合は、かかりつけ医や児童精神科にご相談されることをおすすめします。
まとめ
不登校のお子さんとゲームのルールを考えるうえで最も大切なのは、「禁止・制限」よりも先に「理解・対話」があることです。ゲームがお子さんにとってどんな意味を持っているかを理解してから、一緒にルールを作ることが、長く続く約束をつくる近道になります。文部科学省「生徒指導提要」(2022年改訂)が示すように、子どもの行動の背景を読み取ろうとする姿勢が支援の出発点です。まずはお子さんの話をゆっくり聞くことから始め、必要であれば専門家の力も借りながら、無理のない形でルールを育てていただければと思います。焦らずに、お子さんのペースを大切にしながら進めてください。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和5年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm
・文部科学省「生徒指導提要(令和4年12月改訂)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00004.htm
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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