「まさか小学生のうちから……」と感じている保護者の方も多いかもしれません。かつては中学生に多いイメージがあった不登校ですが、近年は小学生の不登校が急速に増加しており、社会的な注目を集めています。文部科学省の調査によると、小学生の不登校児童数は10年前と比べて大幅に増加しており、もはや「一部の子どもだけの問題」とは言えない状況です。増加の実態・背景・保護者にできる対応について、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。
小学生の不登校は今、どのくらい増えているのか
文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(2023年度公表分)によると、小学校における不登校児童数は約105,000人に達し、調査開始以来、過去最多を更新し続けています。10年前の2013年度の小学生不登校数が約24,000人程度であったことと比較すると、約4倍以上に膨らんでいる計算になります。
さらに注目したいのは、在籍児童数に対する割合です。同調査では、1,000人あたりの不登校児童数が小学校で17.0人に達しており、これは「クラスに1人いてもおかしくない」水準です。かつては「中学で増える」という印象が強かった不登校ですが、小学校段階で既に関係者全員が真剣に向き合うべき課題となっています。
増加の背景として、同調査では「無気力・不安」を主な要因とする児童の割合が最も高いことが示されています。身体的な症状がなくても学校に行けなくなるケースが増えており、保護者の方が「どこも悪くないのに何で?」と戸惑われるのも無理のないことです。
数値だけを見ると心配が増すかもしれませんが、ここで大切な視点をお伝えしたいと思います。不登校の増加は、子どもが以前より「弱くなった」ということではありません。学校に行けない状態を抱えながらも、以前よりそれを隠さずに表現できる環境になってきたという側面もあると考えられています。また、不登校を早期に把握・支援する体制が広がったことで、数字として可視化されやすくなっているという見方もあります。
なぜ小学生の不登校が増えているのか:主な背景
増加の要因については、文部科学省の調査データをはじめ、さまざまな観点から議論されています。現時点で有力とされている背景を整理すると、以下の4点が挙げられます。
1.「無気力・不安」の低年齢化
文部科学省の2023年度調査では、小学生不登校の最大の要因として「無気力・不安」が挙げられています。これは中学生・高校生と同じ傾向であり、以前は中学以降に顕著だったメンタルヘルスの課題が小学生にも広がっている可能性を示しています。
2.コロナ禍の影響による生活リズムと対人関係の変化
2020年以降の休校・分散登校の経験が、集団生活への適応を難しくしたと指摘する専門家もいます。低学年時に集団生活を十分に経験しないまま進級したケースも多く、人間関係の構築や登校習慣の定着に課題が生じやすい環境がしばらく続きました。
3.家庭での相談・認知がしやすくなった
不登校に対する社会的な理解が深まるにつれて、「行けない」という状態を保護者が早期に学校に伝えやすくなってきているという傾向があります。以前は無理をして登校していた子どもが、今は休む選択が取りやすくなったという側面も数値に反映されていると考えられます。
4.発達特性や身体症状との関連
起立性調節障害や発達障害、HSC(ひといちばい敏感な子)など、身体・神経発達的な要因が登校困難につながるケースも増えています。これらは以前から存在していましたが、診断・認知が広がったことで把握されやすくなっています。
保護者がまず知っておきたい「休むことへの向き合い方」
お子さんが「学校に行けない」という状態になったとき、保護者の方が最初に直面するのは「どうすれば学校に行けるようになるか」という問いです。しかしここで一度立ち止まって考えていただきたいことがあります。
文部科学省は2016年の「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)において、学校への復帰だけでなく「多様な学習機会の確保」を支援の柱の一つとする方針を明確にしています。つまり、「学校に戻ること」だけを目標にする必要はなく、お子さんの状態に合わせた柔軟な対応が制度的にも認められているということです。
保護者の方ができる対応として、まず意識していただきたいのは次の3点です。
1.「休む」を否定しないこと
無理に登校を促すことで、お子さんの状態が悪化する場合があります。まずは「休んでもいい」という安心感を伝えることが、回復への土台になるとされています。
2.学校以外の相談窓口を活用すること
教育委員会が設置する「教育支援センター(適応指導教室)」や、スクールカウンセラー、こども家庭庁が連携するこども家庭センターなど、学校外でもお子さんをサポートする窓口があります。「学校に話しにくい」という場合は、まずそうした外部窓口への相談から始めることもひとつの方法です。
3.保護者自身も一人で抱え込まないこと
保護者の方が疲弊してしまうと、長期的なサポートが難しくなります。保護者向けの相談窓口も全国に設けられていますので、お子さんのことだけでなく、保護者の方自身の気持ちを話せる場所を探してみてください。
利用できる支援制度と相談窓口の整理
お子さんが不登校の状態にある場合、活用できる支援制度は複数あります。ここでは代表的なものを整理します。
「教育支援センター(適応指導教室)」:各市区町村の教育委員会が設置する施設で、学籍のある学校に在籍しながら利用できます。学習支援や生活リズムの立て直しをサポートする場として機能しており、指導要録上の「出席」として認められる場合があります。
「スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー」:学校に配置された専門家です。文部科学省は全国への配置拡充を進めており、学校を通じて相談の窓口を持つことができます。在籍校に相談してみてください。
「フリースクール」:民間が運営する学びの場で、お子さんのペースに合わせた学習や居場所づくりが行われています。一定の条件を満たした場合、在籍校の校長判断により出席扱いとなる場合があります(文部科学省通知に基づく対応)。
「こども家庭センター」:こども家庭庁が推進する相談窓口で、子育て全般の相談に対応します。医療・福祉・教育にまたがる複合的な支援が必要な場合にも対応できる体制が整えられつつあります。
制度は存在していても、「どこに連絡すればいいか分からない」という状況になりがちです。まずはお子さんの在籍する学校か、市区町村の教育委員会に「相談したい」と一本連絡するところから始めてみてください。
まとめ
文部科学省の2023年度調査で、小学生の不登校は約105,000人と過去最多水準に達しています。増加の背景には、無気力・不安の広がり、コロナ禍の影響、社会的な認知の変化、発達特性との関連など、複合的な要因があると考えられています。重要なのは、「不登校になったからといって、将来が閉ざされるわけではない」ということです。教育機会確保法の理念のとおり、学び方・支援の形はひとつではありません。お子さんのペースを大切にしながら、学校・教育委員会・こども家庭センターなどの窓口と連携して、一歩ずつ動いていただければと思います。保護者の方が「まず知る」ことが、お子さんにとっての大きな支えになります。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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