「おはよう」と声をかけても布団から出てこない我が子を前に、何も言えなくなってしまったことはないでしょうか。何を言っても傷つけてしまいそうで、どう接すればいいのかわからなくなる、そんな思いを抱えている保護者の方は、決して少なくありません。文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(2024年度)によると、小・中学校における不登校児童生徒数は約34万人に達しており、この数は過去最多の水準が続いています。つまり、今この瞬間も、同じように悩んでいる保護者の方が全国にたくさんいらっしゃいます。あなただけが孤独に悩んでいるわけではありません。
まず知っておいてほしいこと——声かけに「正解」はありません
お子さんへの声かけ方法を調べているということは、それだけ我が子のことを真剣に考えている証拠です。その気持ち自体が、すでに大切な「寄り添い」のはじまりだということを、まず受け取っていただけたらと思います。
不登校になった子どもへの声かけに「これさえ言えば大丈夫」という絶対的な正解はありません。子どもによって状況も、学校に行けない理由も、心の状態も違うからです。ただ、多くの専門家や支援者の知見に共通している考え方があります。それは「まず気持ちを受け止める」ということです。
よかれと思って「早く学校に戻れるといいね」「ちょっとだけ行ってみたら?」と声をかけてしまう保護者の方は多いのではないでしょうか。その言葉の奥には、子どもへの愛情と心配があることは間違いありません。しかし子どもの立場から見ると、「やっぱり学校に行かないといけないのか」というプレッシャーとして届いてしまうこともあります。
声かけの前に、保護者の方自身が「まず聴く」という姿勢をもつことが、大きな支えになるといわれています。子どもが何かを話し始めたとき、すぐにアドバイスしたり解決策を示したりせず、「そうか、つらかったんだね」と受け止めるだけでも、子どもにとっては安心感につながることがあります。
避けたい声かけと、その理由
「なぜ学校に行けないの?」という問いかけは、保護者として当然の疑問です。しかし不登校の多くのお子さんは、自分でも「なぜ行けないのか」がわかっていないことがあります。理由を問われることで、「自分でもわからない自分がおかしい」と感じ、さらに自己否定を深めてしまう場合もあります。
同様に、「みんなは行っているのに」「このままじゃ将来困るよ」という言葉も、子どもを焦らせてしまうことがあります。もちろん保護者の方が将来を心配するのは当然のことですし、その不安は決して間違っていません。ただ、すでに自分を責めている子どもにとって、こうした言葉はさらに追い詰める刺激になりやすいという傾向があります。
文部科学省が2022年に改訂した「生徒指導提要」では、不登校への対応として「子どもの状態を見守りながら、安心できる環境づくりを優先すること」が基本的な考え方として示されています(出典:文部科学省「生徒指導提要」2022年改訂)。保護者の方の「何とかしてあげたい」という思いが、焦りのある声かけにつながってしまうこともありますが、まず「家が安心できる場所」であることを伝えることが、声かけの基本にあるといえるでしょう。
寄り添える声かけ——日常の中の小さな言葉が大切です
では、どのような言葉かけをすればよいのでしょうか。大切なのは、学校や将来に関係しない「日常の声かけ」を続けることです。
「おはよう、よく眠れた?」「今日は何か食べたいものある?」「昨日のドラマ面白かったね」など、学校に関係しない言葉を穏やかにかけ続けることは、「あなたが家にいることを歓迎しているよ」というメッセージになります。お子さんが返事をしなくても、その言葉は確実に届いています。
また、もしお子さんが何かを話し始めたときは、スマートフォンや家事の手を止めて、顔を向けることがとても重要です。「うん、そうなんだ」「それで?」という短い相槌でも、「あなたの話を聴いているよ」という安心感を伝えることができます。
一方で、沈黙を怖れなくても大丈夫です。言葉がないことが「無関心」というわけではありません。同じ空間にいること、そばにいること自体が、子どもにとって大きな支えになることもあります。「あなたのことを見ているよ」という存在感は、言葉以上に伝わることがあります。
こども家庭庁は、子どもの意見を聴き、子どもにとっていちばんの利益を考えることを政策の柱として掲げています(出典:こども家庭庁 公式サイト)。保護者の方も同じように、「お子さんの声を聴くこと」を最初の一歩にしていただけたらと思います。
保護者の方自身もつらいはずです——あなたのことも大切に
「自分の育て方が悪かったのかもしれない」「もっと早く気づいてあげていれば」と自分を責めている保護者の方は多いのではないでしょうか。そのお気持ち、とてもよくわかります。責めてしまうのは、それだけお子さんのことを大切に思っているからです。
ただ、不登校はひとつの原因で起きるわけではなく、学校環境・本人の気質・友人関係・体の不調など、さまざまな要素が重なった結果であることがほとんどです。文部科学省の調査でも、不登校の要因として「無気力・不安」「生活リズムの乱れ」「いじめを除く友人関係をめぐる問題」など複数の要因が挙げられており、単純に保護者の養育態度だけに帰結する話ではないことが示されています(出典:文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』2024年度)。
保護者の方が心身ともに余裕を持てていることが、お子さんの安心にもつながります。一人で抱え込まず、スクールカウンセラー・教育支援センター・こども家庭庁の相談窓口なども、ぜひ活用してみてください。あなたが誰かに話を聴いてもらうことは、お子さんへの支援を続けるためにも、とても大切なことです。
まとめ
お子さんへの声かけに迷うのは、それだけ真剣に向き合っている証拠です。「正解の言葉」を探すよりも、まずそばにいて、日常の小さな言葉を穏やかにかけ続けることが、お子さんに「ここは安心できる場所だ」と伝える第一歩になります。学校や将来の話は、お子さんの心が少し落ち着いてから、一緒に考えていく時間がきっとあります。焦らなくて大丈夫です。あなたの愛情はお子さんに伝わっています。今日も一日、よく頑張っていらっしゃいます。まずはご自身を、どうか責めないでください。
・文部科学省「生徒指導提要(令和4年度改訂版)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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