「学校には行けないけれど、勉強は続けさせてあげたい」と感じている保護者の方は、多いのではないでしょうか。そんなとき、近年注目されているのが「ICTを活用した学習支援」です。タブレットやパソコン、オンライン授業を通じて、自宅にいながら学びを継続できる仕組みが、全国各地で広がっています。ただ、「具体的にどんな制度があるの?」「本当に子どもに合うの?」と疑問をお持ちの方も多いはずです。この記事では、不登校とICT学習支援の制度的な背景から、実際の活用方法まで、公式データをもとに整理してお伝えします。
不登校の現状と「学びの継続」という課題
まず、現在の不登校をめぐる状況を数字で確認しておきましょう。
フリースクール全国ネットワーク(2026年公表)によると、全国で約36万人の子どもたちが不登校状態にあり、全国の小・中学校に占める割合は約4%に達しています。なお、文部科学省の公式統計(令和5年度調査)でも小中学生の不登校者数は約34.6万人にのぼっており、複数の調査が同様の深刻な状況を示しています(出典:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)。つまり、クラスに1人以上の割合で不登校の子どもがいる計算になります。
この数字が示すのは、不登校は一部の子どもだけの問題ではなく、多くの家庭が当事者として向き合っている社会的な課題だということです。
こうした現状を受け、2016年に「教育機会確保法」が成立し、翌2017年に施行されました。この法律は、学校に通えない子どもたちに対して「多様な学びの場を確保すること」を国と自治体の責務として明記した画期的な法律です。フリースクールや自宅学習など、学校以外の学びを公的に認める根拠となっています。
ICTを活用した学習支援は、この「学びの場の多様化」の一環として位置づけられています。文部科学省も、学校に登校できない児童生徒がICTを活用して学習した場合、一定の要件を満たせば「出席扱い」にできるという通知を出しており、多くの自治体・学校でその運用が始まっています。
「家にいても学びが認められる」という仕組みが整いつつあることは、保護者の方にとって大きな安心材料になるのではないでしょうか。
ICT学習支援の種類と特徴
一口に「ICT学習支援」といっても、その形はさまざまです。保護者の方が迷わないよう、主な種類を整理します。
1.学校が提供するオンライン授業・ビデオ通話
文部科学省のGIGAスクール構想により、公立小中学校の児童生徒には1人1台の端末が配備されています。学校によっては、担任の先生がオンラインで授業を届けたり、ホームルームにビデオ通話で参加したりする取り組みを行っています。この場合、出席扱いになる可能性があるため、まず担任の先生に相談してみることをお勧めします。
2.自治体が運営するICT支援サービス
いくつかの自治体では、不登校の子ども向けに独自のオンライン学習プラットフォームを提供しています。自宅のパソコンやタブレットからアクセスできるため、登校が難しい状態でも学習のリズムをつくりやすいというメリットがあります。対応状況は自治体によって異なりますので、お住まいの教育委員会に問い合わせてみることが最初のステップになります。
3.民間のオンライン学習サービス・通信制高校
中学生が高校進学を考える段階に入ると、通信制高校が選択肢のひとつになります。通信制高校の多くは、授業の大部分をオンラインで受けられる体制を整えており、ICTを活用した自宅学習が学習の主軸となっています。それぞれの学校によって学習スタイルや費用が大きく異なるため、複数校を比較検討することが大切です。
4.民間のオンライン家庭教師・学習塾
マンツーマンのオンライン指導を行うサービスも増えています。子どものペースに合わせて進められるため、学習の遅れが気になる保護者の方から注目されています。サービスの品質や費用は事業者によって差があるため、体験授業を活用して慎重に選ぶことをお勧めします。
出席扱いになる条件とは
保護者の方からよく聞かれる疑問に「自宅でのICT学習は、学校の出席として認められるの?」という点があります。
文部科学省は、不登校の児童生徒がICTや郵便などを活用して学習した場合、一定の要件を満たせば出席扱いにできることを通知(「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」)で示しています。
その要件は、大きく次の3点に整理できます。
1.保護者と学校との間で十分な連携・協力関係があること
2.学校外の施設や自宅での学習活動について、学校が適切に把握・支援していること
3.当該児童生徒の学習状況や成果について、学校として評価できる状態であること
つまり、「親が勝手に自宅学習させている」状態では出席扱いにはなりません。学校と連携し、担任の先生に学習の状況を定期的に共有することが条件になります。
この仕組みを活用するためには、学校との関係を維持することが前提になります。「学校に行けない=学校と縁を切る」ということにはなりませんので、担任や教育相談の先生との連絡だけは続けておくことをお勧めします。
こども家庭庁も、子どもにとって最善の利益を実現するための情報発信を行っており、教育機会の確保に関する政策を後押しする立場から情報提供を続けています。詳細はこども家庭庁公式サイトよりご確認いただけます。
ICT学習支援を使う際に保護者が意識したいこと
ICT学習支援にはメリットが多い一方で、活用する際に意識しておきたい点もあります。
まず、「ICT=すべての子どもに合う」わけではないという点を押さえておきましょう。画面を見続けることが苦手な子ども、一人での学習に孤独感を感じやすい子ども、そもそも「勉強」という行為自体への拒否感が強い子どもには、ICTを無理に押しつけることが逆効果になる場合があります。
次に、学習のペースは子ども自身が決めるという姿勢が大切です。保護者の方が「今日は何分やった?」「先週より減ってる」と過度に管理してしまうと、子どもが追い詰められてしまうことがあります。学びを継続させることよりも、まず安心できる環境を整えることが優先されます。
また、ICT学習支援はあくまで「補助的な手段」です。学習の継続ができているとしても、子どもの心身の回復が最優先であることは変わりません。文部科学省の生徒指導の方針でも、不登校支援においては「学習支援」と「心理的支援」の両立が重要とされています。
一方で、「何もできていない」と感じることへの罪悪感を持ちすぎる必要もありません。ICTが整っていない状態でも、規則正しい生活を送ること、好きなことに取り組むことも、十分な「学びの準備」になります。焦らず、お子さんのペースを見守っていただければと思います。
まとめ
不登校の子どもへのICT学習支援は、教育機会確保法(2016年成立・2017年施行)を背景に、公的な制度として整備が進んでいます。フリースクール全国ネットワーク(2026年公表)によれば全国で約36万人・小中学生の約4%が不登校状態にあり、文部科学省の公式調査(令和5年度)でも約34.6万人という数字が示されています。学校以外の学びの場の整備はいまや社会全体の課題です。
ICT学習支援には、学校のオンライン授業・自治体のサービス・通信制高校・民間の学習サービスなど多様な選択肢があります。出席扱いを目指す場合は、学校との連携が不可欠です。一方で、子どもの心身の回復を最優先にしながら、無理のない形でICTを活用することが大切です。
まず担任の先生やスクールカウンセラーに「ICT学習支援を使えるか」を相談することが、最初の一歩になります。情報が多くて迷う場合は、お住まいの教育委員会や教育相談センターへの問い合わせもお勧めします。
参考情報
- フリースクール全国ネットワーク「不登校・多様な学びに関する情報」 https://freeschoolnetwork.jp/
- 文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
- 文部科学省 生徒指導「不登校・生徒指導上の諸課題」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
- こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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