「学校側の対応に納得できない」「いじめの加害者に法的な責任をとらせたい」「子どもを欠席させていることで何か罰則があるのか不安」——不登校に直面した保護者の方から、こうした法律に関わる疑問が生まれることは珍しくありません。弁護士への相談という選択肢は、多くの保護者にとってまだ身近ではないかもしれませんが、不登校をめぐる問題は法律と深く結びついている場合があります。不登校と弁護士相談がどのような場面でつながるのかを、制度の仕組みとともに整理していきます。
不登校と法律の接点——どんな問題に弁護士が関わるのか
不登校は、一見すると心のケアや学習支援の問題として語られることが多いですが、実際にはいくつかの場面で法的な問題と交差しています。
まず多いのが、「いじめを原因とした損害賠償」に関する相談です。いじめによって子どもが学校に行けなくなった場合、加害者やその保護者、あるいは学校・教育委員会の対応が適切でなかったとして、民事上の責任を問いたいという保護者の方が一定数いらっしゃいます。こうしたケースでは、証拠の整理や交渉・訴訟の対応を弁護士に依頼することになります。
次に、「学校の対応や措置への不服申し立て」についてです。たとえば出席停止処分、内申点の不当な評価、転校を認めないといった学校や教育委員会の対応に疑問を感じた場合、弁護士を通じて情報公開請求や異議申し立てを行うことが可能です。
また、「親権・離婚問題と不登校の絡み」も相談件数として少なくありません。保護者が離婚や別居状態にある家庭で子どもが不登校になった際、どちらの親が養育を担うかという問題と、子どもの心理的安全を確保する問題が同時に発生することがあります。
さらに、最近注目されているのが「スクールロイヤー」の存在です。文部科学省は学校現場に弁護士が助言・支援を行う「スクールロイヤー制度」の普及を推進しており、学校側だけでなく保護者からの相談に対応する形で活用が広がりつつあります(出典:文部科学省「生徒指導に関する施策」、2026年5月時点)。
義務教育と欠席——親に罰則はあるのか
「子どもを学校に行かせないことで、親が法的に責任を問われるのでは」と心配されている保護者の方も少なくありません。ここで正確に整理しておきたいと思います。
日本の教育制度では、学校教育法および憲法第26条により、保護者は子どもに「普通教育を受けさせる義務」を負っています。ただし、この義務は「学校に物理的に登校させること」そのものではなく、「教育を受ける機会を確保すること」と解釈されています。
文部科学省の通知(2019年10月)では、不登校児童生徒への支援において「登校を最終目標とするのではなく、社会的な自立を目指す」という方針が明確に示されています。また、2016年に施行された「教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)」では、不登校の子どもが学校以外の場で学ぶことも正式に認められています。
つまり、子どもが学校を休んでいることそのものを理由に、保護者が法的に罰せられる可能性は現行の制度上、基本的にはないと考えられています。ただし、「教育を受けさせる機会を意図的に奪っている」と判断されるような特別な状況(たとえば長期的な養育放棄や虐待が絡む場合)は、児童福祉法や刑法上の問題となり得るため、弁護士や福祉機関への相談が必要なケースもあります。
弁護士に相談できる窓口——費用と手順の整理
「弁護士に相談するのはハードルが高い」と感じる方も多いと思います。しかし、現在は無料や低費用で相談できる窓口が複数存在しています。
1.法テラス(日本司法支援センター)
国が設立した法律相談機関で、収入が一定基準以下の方であれば弁護士費用の立替制度を利用できます。電話番号は0570-078374で、平日9時から21時、土曜日9時から17時まで対応しています。
2.各都道府県弁護士会の法律相談センター
多くの弁護士会が1回30分ほどの有料相談(5,500円前後が目安)を実施しています。なかには「子どもの権利に関する相談」として専門的に対応する弁護士を紹介してくれる場合もあります。
3.市区町村の無料法律相談
多くの自治体が月に数回、弁護士による無料法律相談を実施しています。定員制のため早めの予約が必要ですが、身近な窓口として活用できます。
4.こども家庭庁の相談窓口
こども家庭庁(https://www.cfa.go.jp/)では、子どもや家庭に関わるさまざまな相談窓口の案内を行っています。法律相談の直接窓口ではありませんが、適切な相談先へのつなぎ役として機能しています。
相談の前には、「いつから不登校になったか」「学校や教育委員会とどのようなやり取りをしたか」「どのような被害・問題が発生しているか」を時系列でメモしておくと、限られた相談時間を有効に使えます。
スクールロイヤーとは何か——学校と保護者の橋渡し役
近年、学校現場で注目を集めているのが「スクールロイヤー」という制度です。スクールロイヤーとは、学校や教育委員会に対して法的なアドバイスを行う弁護士のことで、主に次のような場面で活用されています。
・いじめ問題への対応方針の助言
・保護者との関係が複雑化した際の交渉支援
・学校内での事故・問題行動への法的対応
・個人情報管理や情報公開請求への対応
文部科学省は2018年度からスクールロイヤーのモデル事業を開始し、全国の都道府県・市区町村教育委員会への普及を進めています。ただし、スクールロイヤーは基本的に「学校側のために動く弁護士」であることに注意が必要です。保護者の立場で学校と対立する場合には、保護者が独自に弁護士を探すことが求められます。
厚生労働省の調査(令和4年度)によると、15歳から64歳の50人に1人がひきこもり状態にあるとされており、不登校からひきこもりへと移行するケースがあることも指摘されています(出典:厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」)。こうした長期化を防ぐためにも、法的な問題と心理的な支援を別々に、しかし並行して考えることが重要です。
まとめ
不登校と弁護士相談は、一見すると縁遠い組み合わせに思えるかもしれませんが、いじめによる損害賠償、学校の対応への不服、親権・養育をめぐる問題など、法律が絡む局面は実際に存在しています。まず知っておいていただきたいのは、「子どもが学校を休んでいること自体で保護者が罰せられるケースは基本的にない」という事実です。
法的な問題が発生していると感じたら、法テラスや弁護士会の無料相談から始めてみてください。相談することで問題が整理され、次のステップが見えやすくなります。焦らず、一つひとつ確認しながら進めていただければと思います。
・文部科学省「生徒指導等について」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
・文部科学省「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
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