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臨床心理士に相談する前に知っておきたい不登校支援の基本

臨床心理士に相談する前に知っておきたい不登校支援の基本

「学校に行きたくない」と言い続ける子どもを前に、どう声をかければいいのかわからなくなっていませんか。そのとき心強い存在になり得るのが、臨床心理士などの専門家です。しかし、どんなことを相談できるのか、何を聞けばいいのか、見当もつかないという保護者の方も多いと思います。この記事では、臨床心理士が不登校のお子さんやその保護者にどのような視点から関わるのか、そして相談前に保護者の方が知っておくと助けになることを、公的機関の情報や専門知識をもとにお伝えします。

目次

不登校の現状と「専門家に頼る」という選択

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小・中学校における不登校の児童生徒数は約34万6,000人にのぼり、10年連続で増加傾向が続いています。この数字は、不登校がごく一部の家庭に起きる特別な出来事ではなく、多くの保護者の方が直面している現実であることを示しています。

それでもなお、「うちだけがこんな状況なのでは」「自分の育て方が悪かったのかもしれない」と、一人で抱え込んでしまう保護者の方は少なくありません。臨床心理士への相談を「大げさではないか」と躊躇される方もいます。しかし、専門家の力を借りることは、お子さんの状態を正確に理解するための大切な一歩です。臨床心理士は医療職とは異なり、薬の処方などは行いませんが、心理的なアセスメント(状態の見立て)とカウンセリングを通じて、お子さんと保護者の双方を支援することを専門としています。

「なぜ学校に行けないのか」という問いに対して、「怠けているから」「気持ちの問題だから」という見方は適切ではないことが多いです。文部科学省が2023年に改訂した「生徒指導提要」においても、不登校を「問題行動と判断してはならない」と明示しており、背景には発達特性、身体的な不調、家庭環境や対人関係のストレスなど、さまざまな要因が複合している場合があります。まず「なぜ行けないのか」を理解しようとする姿勢が、支援の出発点になります。

臨床心理士はどのような視点でお子さんを見るのか

臨床心理士がお子さんと関わるとき、いくつかの視点から状態を整理していきます。一つは「心理的なアセスメント」と呼ばれる見立てのプロセスです。これは、面談や観察、必要に応じた心理検査などを通じて、お子さんがどのような特性や傾向を持っているか、今どのような心理的状態にあるかを丁寧に確認していく作業です。「この子は何障害ですか」と診断を決めるのではなく、「この子にはどんな特性があり、どんな環境が合っているか」を探ることに重点が置かれます。

たとえば、音や光の刺激に敏感な特性のあるお子さんの場合、集団での学習環境そのものが強いストレスになっていることがあります。また、気持ちを言葉にすることが難しい特性のあるお子さんの場合、「学校が嫌だ」という言葉の裏に「うまく説明できない不安や疲れ」が隠れていることもあります。臨床心理士はそうした子どもの内面を丁寧に読み解き、保護者の方に「このお子さんはこういう状況にいるようです」と伝える役割も担っています。

また、保護者自身のカウンセリングを行う臨床心理士も多くいます。お子さんの不登校が長引くにつれ、保護者の方も疲弊したり、焦りや不安が積み重なったりします。保護者の方が心理的に安定していることが、お子さんへの接し方にも良い影響を与えるとされています。「子どものために親が変わらなければ」という義務感からではなく、保護者自身も適切なサポートを受ける権利があるということを、ぜひ知っておいてください。

相談前に整理しておくと役立つこと

臨床心理士との初回面談は、保護者だけが来談する場合もあれば、お子さんと一緒に来談する場合もあります。どちらの形式が合っているかは、お子さんの状態や相談機関の方針によって異なります。初めての相談に向けて、いくつかの情報を事前に整理しておくと、限られた時間をより有効に活用できます。

まず、「いつ頃から、どのような状況で学校に行けなくなったか」という経緯を簡単にまとめておくことをおすすめします。最初の日に何があったか、その後の変化、現在の一日の過ごし方など、時系列で把握しておくと臨床心理士も状況を理解しやすくなります。次に、「お子さんが訴えている言葉や身体症状」もメモしておきましょう。「頭が痛い」「お腹が痛い」「朝だけ気持ちが悪くなる」といった身体症状がある場合は、起立性調節障害(体の姿勢変化に伴い血圧や血流が適切に調整されにくくなる状態)や不安障害(日常生活に支障をきたすほどの強い不安が続く状態)の可能性も含めて確認が必要な場合があります。

また、「これまでに試みたこと・うまくいったこと・うまくいかなかったこと」も共有できると、臨床心理士が支援方針を考える際の参考になります。「厳しく登校を促したがかえって状態が悪化した」「好きな活動をしているときは元気がある」といった情報は、お子さんの特性を理解するための大切な手がかりになります。相談は「問題を解決してもらう場」というよりも、「一緒に子どもを理解していく対話の場」と捉えていただくと、より自然に話が進みやすくなるでしょう。

どこで臨床心理士に相談できるのか

臨床心理士に相談できる場所はいくつかあります。学校に配置されている「スクールカウンセラー」も多くが臨床心理士の資格を持っており、無料で利用できます。文部科学省は全国の公立学校へのスクールカウンセラー配置を推進しており、お子さんが現在在籍している学校に問い合わせてみることが最初の一歩になります。

次に、各都道府県・市区町村が設置している「教育相談センター」や「子ども家庭支援センター」でも、心理専門職による相談を受けられる場合があります。こども家庭庁(https://www.cfa.go.jp/)のウェブサイトでは、こどもと家庭に関する支援窓口の情報が案内されていますので、まず地域の相談窓口を探す際の参考になります。

また、不登校の子どもが通える民間の「フリースクール」や「教育支援センター(適応指導教室)」にも、心理の専門家が関わっている場合があります。民間のカウンセリングルームで臨床心理士に直接相談する方法もありますが、費用や内容は機関によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。お子さんの状態によっては、小児科や児童精神科など医療機関との連携が必要になることもあります。相談窓口で「どこに行けばよいかわからない」と伝えるだけでも、適切な機関への案内をしてもらえることが多いです。

まとめ

不登校のお子さんを抱える保護者の方にとって、「どこに頼ればいいのか」「何が正解なのか」という問いは、毎日の不安と直結しています。臨床心理士は、お子さんの内面を丁寧に理解しながら、保護者の方と一緒に「この子に合った関わり方」を探してくれる専門家です。すべての答えをすぐに出せるわけではありませんが、専門的な視点からの見立てがあるだけで、保護者の方の不安が少し和らぐことも多いものです。まずはスクールカウンセラーへの相談や、地域の教育相談センターへの問い合わせから、一歩を踏み出してみてください。焦らずに、お子さんのペースを大切にしながら進んでいただければと思います。

気になる症状や状態が続いている場合は、かかりつけ医や児童精神科など医療の専門家にもご相談ください。

・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/

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・不登校の子どもへの声かけと保護者の関わり方:https://futoukou.co.jp/parents-support/
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・不登校の相談窓口と支援制度の使い方:https://futoukou.co.jp/support-system/

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