「学校以外に居場所なんてあるのだろうか」と、頭を抱えている保護者の方は少なくないのではないでしょうか。文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、小・中学校の不登校児童生徒数は約34万人と過去最多を更新しており、多くのご家庭が同じ悩みを抱えています。学校という場所からいったん離れたとき、お子さんが安心できる「居場所」をどのように作ればいいのか、制度と選択肢を整理してお伝えします。この記事が、まず何から始めればよいかを考えるきっかけになれば幸いです。
そもそも「居場所」とは何か——安心・所属・活動という3つの要素について
「居場所」という言葉は漠然と使われがちですが、子どもの支援の文脈では、次の3つの要素が揃った環境を指すと考えるとわかりやすいです。
1.安心できること:叱られたり比べられたりせず、ありのままの自分でいられる空間があることです。
2.つながりがあること:大人や同世代との関係性があり、孤立していないと感じられることです。
3.何かができること:趣味・学習・ゲームなど、自分が関われる活動が存在することです。
文部科学省の「生徒指導提要」(2022年改訂版)では、不登校の要因として「学校への所属感の喪失」が繰り返し言及されており、学校という場への所属感が失われたとき、代わりの「所属できる場所」が回復のカギになるという視点が示されています(出典:文部科学省「生徒指導提要」2022年12月)。
つまり、居場所づくりは「学校に代わる所属感を少しずつ回復させるプロセス」とも言い換えられます。一気に整えようとするのではなく、小さな安心を積み重ねることが大切です。また、どの要素が欠けているかはお子さんによって異なりますので、「うちの子には何が足りていないか」という視点で現状を整理してみることも助けになります。焦らなくて大丈夫です。
自宅で作れる「居場所」——まず家庭内から始める
外の居場所を探す前に、もっとも身近な「家庭」が安心できる場所になっているかどうかを確認することが最初のステップです。不登校になったばかりの時期、お子さんにとって家庭が唯一の安全基地となることが多くあります。
具体的に保護者の方ができることを整理します。
1.評価しない時間を作ること:「今日は何かできた?」「勉強した?」という問いかけを意図的に減らし、一緒にテレビを見たり、ゲームを見守ったりする「何も求めない時間」を設けることです。こうした時間は、お子さんが「この家にいていい」という感覚を育てるうえで非常に重要です。
2.日課の中にごく小さな役割を作ること:「お皿を1枚運んでほしい」「郵便を取ってきてほしい」など、できる範囲のお手伝いを依頼することで、家庭内の「役に立てている感覚」を育てることができます。役割があることは、子どもの自己効力感(自分には何かができるという感覚)を少しずつ回復させます。
3.好きなことを応援する姿勢を見せること:ゲーム・マンガ・動画視聴などを頭ごなしに否定せず、「どんなゲームが好きなの?」と関心を向けることが、お子さんの自己肯定感を保つことにつながります。好きなものを通じた会話が、親子の信頼関係を少しずつ取り戻すきっかけになることがあります。
家庭内の居場所が安定してきたら、次のステップとして外部の場所を少しずつ視野に入れていきましょう。
家庭の外で使える居場所——フリースクール・教育支援センター・通信制高校という選択肢について
学校以外の場としては、大きく分けて次の3種類があります。それぞれの特徴を整理します。
教育支援センター(適応指導教室)各市区町村の教育委員会が設置している公的な支援機関です。通所することで「学校出席扱い」になる場合があります。費用は基本的に無料で、学習サポートや相談が受けられます。ただし、設置数や規模は自治体によって大きく異なりますので、お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせて確認することをおすすめします。
フリースクール民間が運営する学びの場で、学習・体験・交流などを自分のペースで行えます。費用は月1万円〜5万円程度のところが多く、通信制高校と提携して「出席扱い」になる仕組みを持つ施設もあります。こども家庭庁はフリースクール等の民間支援団体との連携を施策として推進しており、全国的に選択肢が広がっています(出典:こども家庭庁 公式サイト、2024年)。学習よりも「まず外に出る」という段階のお子さんにとって、強い出席義務がない環境は取り組みやすい場合があります。
通信制高校・サポート校高校生の年齢であれば、通信制高校やサポート校が「毎日登校しなくていい居場所」として機能する場合があります。個別のペースに合わせた関わりや、好きなことを活かした体験活動を取り入れているサポート校もあり、不登校経験者が社会とのつながりを取り戻す環境として整備されつつあります。通信制高校に関しては、文部科学省が毎年発表する学校基本調査でも在籍者数の増加が報告されており、多様な学びの場として注目が高まっています(出典:文部科学省「学校基本調査」2023年度)。
3つの選択肢はそれぞれ役割が異なります。「どれが正解」ということはなく、お子さんの状態やご家庭の状況に合わせて柔軟に組み合わせることが大切です。
居場所選びで確認したい3つのポイント
「どこを選べばいいかわからない」という保護者の方に向けて、選ぶときに確認してほしいポイントを整理します。
1.お子さんが「見学・体験に行ってみてもいい」と言えるかどうかを確認することです。
保護者が「ここがいい」と思っても、お子さんが「行きたくない」と感じる場所では意味がありません。事前に一緒に見学し、感想を聞くことが大切です。保護者だけで見学して後から「いい場所だった」と伝えるよりも、お子さん自身が現場の空気を感じられる機会を作ることが重要です。
2.スタッフや支援者が「相談しやすい人」かどうかを判断することです。
居場所の質は、そこにいる大人の姿勢で決まる部分が大きいです。「この人には話せそう」と感じられるかどうかを、見学の際に意識して確認してください。お子さんだけでなく、保護者の方自身も「ここには相談できそうだ」と感じられることも重要な判断材料になります。
3.無理に「通わせる」ことを目的にしないことです。
居場所は「通所の実績を作る場所」ではなく、「安心できる経験を積む場所」です。週1日・月2日でも、お子さんが自分から「また行ってみようかな」と思える関わりを積み重ねることが本来の目的です。「どれだけ通えたか」よりも「どんな気持ちで帰ってきたか」に注目するようにしましょう。
こども家庭庁では「相談窓口の案内」として、保護者が地域の支援機関を探せる情報提供を行っています。まず相談窓口に問い合わせることで、地域に合った選択肢を紹介してもらえることがあります(出典:こども家庭庁 公式サイト)。
まとめ
不登校のお子さんに「居場所」を作るプロセスは、一度にすべてを整えようとするものではありません。まず家庭を安心できる場所にすること、次に教育支援センター・フリースクール・通信制高校などの選択肢を無理なく探すこと、そしてお子さん自身が「ここなら大丈夫」と感じられる場所を少しずつ見つけていくこと——この順番を大切にしてください。文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)のデータが示すとおり、同じ状況にある家庭は全国に多数あります。一人で抱え込まず、まずは地域の相談窓口や教育支援センターに声をかけてみることをおすすめします。お子さんのペースを信じながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
参考情報
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2023年度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「生徒指導提要(2022年12月改訂)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「学校基本調査(2023年度)」https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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