「上の子の不登校が、下の子に悪い影響を与えてしまっているのではないか」「きょうだいがずっと我慢しているのではないか」――そんな心配が、じわじわと積み重なっている保護者の方も多いのではないでしょうか。一人のお子さんを支えるだけでも精いっぱいなのに、他のきょうだいのことも気になってしまう。その葛藤はとても自然な気持ちですし、それだけ家族全員を大切に思っているということでもあります。つらいですよね。まず、そのお気持ちをそのまま受け止めさせてください。
家族全体が揺れる、当然のこと
一人のお子さんが不登校になると、家庭全体の空気が変わることがあります。会話のトーンが変わったり、食卓の雰囲気が張り詰めたり、保護者の方がスマートフォンで情報を調べる時間が増えたり。そうした変化を、きょうだいはとても敏感に感じ取っています。
きょうだいが「自分が元気にしていてはいけない」と感じてしまうことや、逆に「なぜあの子だけ学校を休めるのか」とモヤモヤした感情を抱くことは、決して珍しいことではありません。子どもは大人が思う以上に家庭の変化を察知しており、その感情をどう表現していいかわからないまま抱え込んでいることもあります。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(令和5年度)によると、小・中学校の不登校児童生徒数は約34万6千人に達しています。これは過去最多の数字であり、不登校は今や多くの家庭にとって決して他人ごとではない状況です。それほど多くの家庭で、きょうだいへの影響についても同じように悩んでいる保護者の方がいらっしゃると思っていただいて、決しておかしくありません。あなただけではないのです。
きょうだいが感じやすい複雑な感情
きょうだいの気持ちは、一言では表せない複雑さを持っていることがほとんどです。以下のような感情が混在していることが多いと言われています。
「心配している」という気持ちは、きょうだいにとって自然な感情です。特に年上のお子さんが不登校になった場合、弟や妹がお兄ちゃん・お姉ちゃんを助けたいと思いながらも、何もできない自分に無力感を覚えることもあります。
また「自分も学校に行きたくないけれど、言えない」という気持ちが芽生えることもあります。これは決してマネをしているわけではなく、これまで感じていたけれど言えなかった気持ちが、表に出てきやすくなっている状態と考えられます。
さらに「親に心配をかけてはいけない」と、自分の感情をぐっと飲み込んでしまうきょうだいも少なくありません。保護者の方が別のお子さんの対応で精いっぱいに見えると、きょうだいは「自分のことは後回しでいい」と感じ、自分の困り事を言い出せなくなってしまうことがあります。
これらはどれも子どもが一生懸命に家族を思っているからこそ出てくる感情です。きょうだいが複雑な感情を抱えているとしたら、それはあなたの育て方の問題ではありません。子どもたちみんなが家族を大切に思っているからこそ、気持ちが揺れているのです。
きょうだいへの接し方で大切にしたいこと
では、きょうだいにはどのように接するのがよいのでしょうか。完璧な答えはありませんが、多くの専門家が共通して伝えていることがあります。
まず大切にしたいのは、「あなたのことも同じくらい大切に思っているよ」というメッセージを言葉で伝えることです。子どもは「言わなくてもわかっているはず」と大人が思っていても、言葉にされないと伝わりにくいものです。特に不登校のきょうだいに注目が集まっている時期は、意識して声をかける機会をつくることが助けになることがあります。
次に、きょうだいの話をしっかり聞く時間をつくることも大切です。不登校への対応に追われているとき、きょうだいとゆっくり話せる時間が少なくなってしまうことはよくあります。それが続くと、きょうだいは「自分のことには関心を持ってもらえない」と感じ始めてしまうことがあります。短い時間でもよいので、きょうだいだけと1対1で過ごす時間をつくることが、安心感につながることがあります。
また、不登校のことを家庭内でどう説明するかも大切な点です。「お兄ちゃんは今、学校が難しくて休んでいるんだよ」とわかりやすく伝えることで、きょうだいが「なんとなく怖い」「自分には言ってもらえない」と感じる不安を和らげることができます。年齢に合わせた言葉で、状況を正直に伝えることが、きょうだいの安心につながることが多いようです。
保護者の方自身も、無理しないでください
きょうだいへの影響を心配するあまり、自分を責めてしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。「もっと上手に気を配れていたら」「もっと早く気づいていれば」そんなふうに感じる気持ち、よくわかります。
でも、少し立ち止まって考えてほしいのです。不登校のお子さんを支えながら、きょうだいのことも気にかけながら、家庭を守りながら――それを一度にやり遂げようとしているあなたは、すでに十分に頑張っていると思います。完璧に対応できる保護者などいません。そして、その不安を感じること自体が、家族全員への深い愛情の表れです。
こども家庭庁では、子育てや家庭に関する相談窓口の情報を発信しており、保護者の方が一人で抱え込まないための支援体制が整備されつつあります(出典:こども家庭庁公式サイト https://www.cfa.go.jp/)。スクールカウンセラーや地域の相談窓口なども、きょうだいの心理的なサポートについて相談できる場として活用できることがあります。「専門家に頼ることは弱いことではない」と、どうか思っていただければと思います。
まとめ
一人のお子さんが不登校になると、家族全員が影響を受けます。それは当然のことであり、あなたの育て方が悪かったということではありません。きょうだいが複雑な感情を抱えていたとしても、それは家族をそれだけ大切に思っているからこそです。
大切なのは、きょうだいの話をちゃんと聞いてあげること、「あなたのことも見ているよ」と伝えること、そして保護者の方自身も誰かに話を聞いてもらうことです。あなたの愛情は、きっとすべてのお子さんに伝わっています。一人で抱え込まず、少しずつ、できることからで大丈夫です。
参考情報
- 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和5年度)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
- こども家庭庁 公式サイト「相談窓口のご案内」 https://www.cfa.go.jp/
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