「コロナが明けたのに、なぜうちの子はまだ学校に行けないのだろう」と感じている保護者の方は、少なくないのではないでしょうか。実は、コロナ禍は子どもたちの学校生活に対して想像以上に深い影響を残しており、その影響は感染症の収束後も続いているという傾向が確認されています。何が変わり、何が子どもたちを追い詰めているのかを正確に知ることが、適切な支援の第一歩になります。文部科学省の調査データをもとに、コロナ禍が不登校に与えた影響と、保護者の方が今日からできる対応をご一緒に確認していきましょう。
コロナ禍で不登校はどれほど増えたのか
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、2023年度の小・中学校における不登校の児童生徒数は約34万6,000人に達しており、これは前年度(約29万9,000人)からも大幅に増加した数字です。コロナ禍以前の2019年度は約18万1,000人でしたので、わずか4年間でおよそ2倍近くに増加したことになります(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度)。
この数字が示しているのは、コロナ禍が単なる「一時的な混乱」ではなく、子どもたちの学校との関係を構造的に変えてしまった可能性です。感染対策としての一斉休校・分散登校・マスク着用義務・行事の中止などは、子どもたちにとって「学校に行く」という習慣そのものを断ち切る体験になりました。
特に増加が目立つのは小学生です。2019年度に約5万3,000人だった小学生の不登校は、2023年度には約13万3,000人と、約2.5倍に増えています(出典:同調査)。思春期以前の子どもたちにまで不登校が広がっているという現実は、コロナ禍が子どもの発達段階全体に影響を及ぼしたことを示していると考えられます。
保護者の方がこの数字から受け取っていただきたいのは、「こんなに多くの子どもが同じ状況にある」という事実です。お子さんが学校に行けないのは、特別な問題でも、保護者の方のせいでもありません。社会的な背景を持つ、多くの子どもに共通した変化のひとつです。
コロナ禍が子どもに与えた「3つの影響」
不登校の増加には、コロナ禍特有の複数の要因が重なっていると考えられます。文部科学省の調査や専門家による分析をもとに、大きく3つの影響に整理できます。
1.学校との関係が薄れた
一斉休校によって、子どもたちは「毎日学校に行く」というリズムを失いました。再開後も分散登校や短縮授業が続き、クラスメートと深い関係を築く時間が極端に少なくなりました。友人関係が形成されないまま進級・進学した子どもが多く、その後の学校生活において「居場所のなさ」を感じやすい状態になったと指摘されています。
2.家庭学習で「できる・できない」が可視化された
休校中のオンライン授業や課題配布によって、子どもの学習の得意・不得意が家庭で明確になりました。学校という集団の中では目立たなかった学習面のつまずきや、発達特性による困難さが、自宅での学習環境の中で表面化した子どもも少なくありませんでした。
3.心理的な安全感が損なわれた
感染への不安、マスク着用による表情の読み取りづらさ、行事や体験活動の中止など、学校生活の楽しさを支える要素が次々と失われました。学校に行く「意味」や「楽しさ」を感じにくい状況が長く続いたことで、登校への意欲が低下した子どもが増えたという傾向があります。
これらの影響は複合的に重なっており、一つの原因だけを取り除けば解決するという性質のものではありません。保護者の方がお子さんの状況を理解する際には、こうした社会的背景を踏まえることが大切です。
「コロナ明け」でも回復しない理由
感染症法上の分類が変わり、学校生活が表向き「通常」に戻っても、不登校の数は減少していません。なぜ回復しないのか、この点について整理しておきます。
学校に行けなくなった子どもの多くは、「コロナが怖いから行かない」という単純な理由ではなくなっています。コロナ禍という入り口を経て、学校生活への不安・人間関係の困難・体調の問題・学習の遅れなど、複数の困難が積み重なった状態になっています。
また、コロナ禍を経て「学校に行かない選択肢」が社会的に認知されたことも、一因として考えられます。以前であれば「学校に行かなければならない」という暗黙の前提が強く、子ども自身がそれに従うことで登校を続けていたケースが、コロナ禍の休校体験によって「行かなくても生きていける」と気づいた子どもが増えたという見方もあります。これは必ずしも否定的なことではなく、子ども自身が自分の状態を正直に表現できるようになったという解釈もできます。
さらに、コロナ禍によって保護者の働き方が変わり、在宅勤務が増えた家庭では「子どもが家にいる」ことへの抵抗感が以前より低くなったという変化もあります。こども家庭庁は、子どもの意見や状況を尊重した支援体制の整備を推進しており(出典:こども家庭庁公式サイト)、社会全体として子どもの多様な状態を受け入れる方向に動いていることも、統計に影響している可能性があります。
保護者が今できる3つのこと
コロナ禍の影響を受けてお子さんが不登校状態にある場合、保護者の方に意識していただきたいことを3点にまとめます。
1.「学校に戻すこと」を最初の目標にしない
登校再開は一つの選択肢ですが、必ずしもゴールである必要はありません。まずお子さんが安心できる環境を整えることを優先してください。文部科学省の生徒指導方針でも、不登校の支援においては「本人の意思を尊重した対応」が基本とされています(出典:文部科学省「生徒指導提要」改訂版、2022年12月)。
2.学校・教育支援センター・相談窓口を活用する
文部科学省の調査では、不登校の子どもが利用できる公的な支援として、教育支援センター(適応指導教室)や学校外の学習機会が整備されつつあります。担任教師だけでなく、スクールカウンセラーや市区町村の教育相談窓口にも相談してみることをお勧めします。
3.生活リズムを崩しすぎないよう、できる範囲でサポートする
長期間の昼夜逆転は、学校復帰や別の進路選択を検討する際の障壁になる場合があります。ただし、無理に起こすことがお子さんとの関係を悪化させることもあります。「起きられたら一緒に朝食を食べる」など、できる範囲の小さな行動から始めることが現実的です。
まとめ
コロナ禍は、不登校の急増という形で日本の子どもたちの学校生活に大きな影響を残しました。文部科学省の2023年度調査では小・中学校の不登校児童生徒数が約34万6,000人に達しており、2019年度比でおよそ2倍近くに増加しています。この背景には、休校による学校との関係の断絶・人間関係の希薄化・学習面の困難の顕在化などが複合的に絡み合っています。大切なのは、お子さんの状況を「特別な問題」として捉えず、社会的な背景を踏まえながら、お子さんのペースを尊重した対応を続けることです。まずは学校・教育相談窓口・スクールカウンセラーなど、身近な相談先に一歩踏み出してみてください。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「生徒指導提要」(2022年12月改訂)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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