「最近、朝の支度が遅くなった」「食欲が落ちた気がする」——そんな小さな変化を感じながらも、「気のせいかな」と見過ごしてしまうことはないでしょうか。実は、不登校は突然起きるのではなく、その前にいくつかのサインが現れることが多いといわれています。文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2023年度)によると、2023年度の不登校児童生徒数は過去最多の約34万6,000人に達しており、保護者の方が早めに変化に気づくことはとても大切です。今回は、見落としやすい前兆・サインを整理し、気づいたあとにどう動けばよいかをお伝えします。
不登校の前兆として現れやすい「身体のサイン」
不登校の始まりは、精神的なストレスが体に出ることから始まるケースが少なくありません。特に子どもは「学校に行きたくない」とはっきり言葉にできないことが多く、体の不調として気持ちを表現することがあります。
具体的に現れやすい身体のサインには、以下のようなものがあります。
1.朝になると頭痛・腹痛・吐き気を訴えるが、午後になると回復するパターンが続く
2.睡眠リズムが崩れ、夜中まで眠れない、または朝に起きられない日が増える
3.食欲が急に落ちたり、逆に過食気味になったりする
4.発熱は確認できないのに「だるい」「体が重い」を繰り返す
ここで注意していただきたいのは、「仮病かもしれない」と決めつけないことです。仮に医学的な原因が見つからなくても、体の症状は本人の心理的な負荷がそのまま出ているサインである可能性があります。特に「月曜日だけ調子が悪い」「金曜日の夜から元気がなくなる」という曜日のパターンが続く場合は、学校との関係でストレスを感じているサインとして受け取ることが大切です。
また、起立性調節障害(OD)という疾患が不登校の背景にあるケースも報告されており、朝に体を起こすことが医学的に困難な状態になっていることがあります。この場合は「怠けている」ではなく医療的なサポートが必要ですので、症状が続く場合は小児科への相談をお勧めします。
(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度)
日常の行動に現れる「態度・行動のサイン」
身体のサインと並んで現れやすいのが、普段の行動や言動の変化です。こちらは家庭での様子を普段から見ている保護者の方だからこそ気づける変化です。
1.学校の話題を避けるようになり、「学校どうだった?」と聞いても「別に」「普通」など短い答えが続く
2.帰宅後にランドセルや教科書をすぐ確認したり、翌日の準備を嫌がるようになる
3.以前は楽しんでいた習い事や友達との遊びに行きたがらなくなる
4.スマートフォンやゲームの使用時間が急に増え、現実の関係から距離を置く様子がある
5.表情が乏しくなった、笑顔が減ったと感じる
このような変化が「1週間ほど続く」場合は、一時的な落ち込みではなく何らかの継続的なストレスが起きているサインとして受け取るほうがよいでしょう。
行動の変化は、学校内のトラブル(友人関係・いじめ・教師との摩擦)、学習上の困難、集団の中での疲弊感など、複数の要因が重なって起きることが多い傾向があります。文科省が公開している「生徒指導提要」(2022年改訂版)でも、不登校の要因は「複合的」であり、単純に1つの原因を特定することが難しいケースが多いとされています。
(出典:文部科学省「生徒指導提要」2022年改訂版)
見落としやすい「関係性・コミュニケーションのサイン」
身体や行動のサインに比べ、より見落とされやすいのが、家族や周囲との関係性の変化です。
1.親に対してそっけなくなった、または逆に異常なほど甘えてくるようになった
2.「学校なんて意味ない」「行きたくない」という言葉が冗談っぽく混じり始めた
3.兄弟姉妹との口ゲンカが増えた、些細なことで大きく感情的になることが増えた
4.担任の先生や友達の話が会話に出てこなくなった
「学校なんて意味ない」という言葉は、思春期の反抗として片付けられがちですが、学校への強い不満やしんどさを表現している場合もあります。こうした言葉が日常的に出るようになったら、頭ごなしに否定するのではなく「そんなふうに感じているんだね」と一度受け止めてみることが、関係をつなぎ止めるうえで有効だという意見もあります。
こども家庭庁も、子どもが困ったときにまず身近な大人(保護者)に相談できる環境づくりを重要視しており、「子どもの声を聞く」姿勢が早期発見・早期支援につながるとしています。
(出典:こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/)
サインに気づいたあと、保護者はどう動けばよいか
サインに気づいた保護者の方が最もやってはいけないのは、「なぜ行けないの?」と問い詰めることです。子どもは理由を自分でも整理できていないことが多く、責めるような言葉は本人をさらに追い詰める可能性があります。
まず心がけたいことを順に整理します。
1.「様子がいつもと違う」と感じたら、話を聞ける場を意識して作る
たとえば、夕食後に一緒にテレビを見ながら「最近どう?」と自然な流れで声をかけるだけで構いません。
2.「学校を休んでいいよ」と一度明示する
「休んだら怒られる」という恐怖が前景化している場合、「たまには休んでもいい」という言葉が子どもにとって大きな安心感につながることがあります。
3.担任の先生やスクールカウンセラーに相談する
学校での様子は家庭では見えません。担任や養護教諭・スクールカウンセラーへの連絡は、状況を把握するための重要なステップです。文部科学省は各校へのスクールカウンセラーの配置を進めており、保護者からの相談も受け付けています。
4.相談窓口を活用する
こども家庭庁や各自治体の教育委員会では、不登校に関する相談窓口を設けています。「教育支援センター(適応指導教室)」も、在籍校とは別に利用できる公的な支援機関です。
(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度)
まとめ
不登校の前兆・サインは、「身体の変化」「行動の変化」「コミュニケーションの変化」という3つの方向に現れることが多い傾向があります。文部科学省の調査では不登校児童生徒数が34万6,000人を超えており、特別なことではなく多くのご家庭が直面している状況です。大切なのは、「変だな」と感じた時点で焦らず子どもを観察し、責めずに聞く姿勢を持つことです。サインに気づいたら、まずスクールカウンセラーや各自治体の相談窓口に連絡してみてください。専門家に頼ることは、保護者の方にとっても子どもにとっても、大きな支えになるはずです。
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」2023年度 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・文部科学省「生徒指導提要」(2022年改訂版) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/
・こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/
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